先日行われたアメリカの大統領選挙では共和党のトランプ氏が当選し、次期大統領となることが決まりました。
私はニュースで情報収集しているだけのレベルでしたが、当日の朝まではどのニュースの事前予想を見ても民主党のクリントン氏が優勢であるとの報道ばかりで、勝利は確実といった雰囲気でした。ところが実際に選挙結果が出ると、結果はトランプ氏の勝利となり、非常に驚きを感じました。
イギリスの国民投票でブレグジット(EU離脱)が決定した時も全く同様の経験をしたので、事前の想定とは逆の結果に驚くことを、二度続けて経験したことになります。
両方の選挙に共通しますが、事前予想が外れた理由として、①事前予想とは異なる意見を持っている一般大衆の声が、事前調査では正しく把握されていなかった、②事前調査では本音を言わない有権者がいた(トランプ氏を支持するとは、恥ずかしくて公式には言えない雰囲気があったという報道もあるようです)などが挙げられています。
これは海外の、しかも国レベルでの出来事ですが、似たような状況は実は身近なIPOを目指す企業でもあったりします。
例えば、創業者や経営陣が自社の発展・成長のためにIPOを目指して準備を進めている会社の場合、創業者や経営陣は自社がIPOして上場企業となることが会社にとってベストの選択だと考えています。そして、自社の他の役職員も当然そのように考えて上場準備に取り組んでいると思っています。ところが、実際には他の役職員の中に、心の中ではIPOすることに反対している人が存在していたりすることがあります(ただし、それを声に出すことは社内の雰囲気的にできない状況)。
また、自社が目指す理念や自社の企業文化について、初期から会社にいる創業メンバーはメンバー間で共有できていますが、他の全役職員が同じ考えのもとに動いていると考えていても、実は後から新しく入ってきた従業員は違う考えを持っていて、必ずしも社内でベクトルが統一できていなかったりすることもあります。
IPO準備の過程においてこういった状況があると、どこかで歪みが出て、IPO準備が上手くいかなくなりがちです。ただし、こちらは大統領選のように実際に選挙をして結果が明らかになるわけではないので、その実態が把握できないまま進んでしまうことになります。
色々な意見があることは当然で、意見や考え方が社内で完全に一致するということもなかなか無いでしょうが、「社内に実は違う意見を持っている人がいる」「社内で本音を言う機会がない」といった可能性があることを常に想定して、実態の把握と改善のために本音で意見交換・議論ができる場を設けるなど、コミュニケーションを深める努力をすることが大事になるように思います。
(関口)