取引所に株式を上場するためには、取引所の審査を受けて合格しなければなりません。(以下、この項において、取引所の審査のことを「上場審査」と言います。)
上場審査は、
① 形式的な基準への適合状況の確認(書面により行う)
② 前記①に適合した会社を対象に行われる一定の基準への適合状況の確認(会社へのヒアリング等により行う)
の2段階に分かれます。
このうち①における『形式的な基準』のことを「形式基準」、②における『一定の基準』のことを「実質基準」、この2つを総称して「審査基準」と呼ぶことがあります。※
※「形式基準」は「形式要件」と、「実質基準」は「実質審査基準」と呼ばれることもあります。
取引所の各市場は、その成り立ちや対象とする企業が異なるため、それぞれ独自の「形式基準」及び「実質基準」を定めていますので、株式の上場を検討する際には、上場を希望する市場の「形式基準」と「実質基準」を確認する必要があります。
(注1)現在、東京証券取引所では、市場第一部・市場第二部・マザーズ・JASDAQ(スタンダード及びグロース)の5つの市場区分を、明確なコンセプトに基づいた3つの市場に再編成することが予定されています。(2022年4月に一斉移行予定)
市場の再編成に伴い、それぞれの市場の性格付けに合わせて審査基準も変更予定です。
新市場区分案(名称は仮称)
市場区分 |
コンセプト |
プライム市場 |
多くの機関投資家の投資対象になりうる規模の時価総額(流動性)を持ち、より高いガバナンス水準を備える企業向けの市場 |
スタンダード市場 |
公開された市場における投資対象として一定の時価総額(流動性)を持ち、上場企業としての基本的なガバナンス水準を備える企業向けの市場 |
グロース市場 |
高い成長可能性を実現するための事業計画及びその進捗の適時・適切な開示が行われ一定の市場評価が得られる企業向けの市場 |
(㈱東京証券取引所「新市場区分の概要等について」(2020年2月21日)をもとに作成)
(注2)市場の性格付け(コンセプト)を反映した、審査基準の概要は下表のとおりです。
市場ごとの審査基準の変更は、2022年4月の一斉移行日に向けて、段階的に行われます。第一次の改定(2020年11月1日)後の基準については用語集の「東証各市場の形式要件比較表」をご参照ください。
【新市場区分ごとの審査基準の概要】
㈱東京証券取引所「新市場区分の概要等について」(2020年2月21日)より
プライム市場
項目 |
考え方 |
基準 |
新規上場基準 |
流動性 |
多様な機関投資家が安心して投資対象とすることができる潤沢な流動性の基礎を備えた銘柄を選定する。 |
株主数 |
800人以上 |
流通株式数 |
2万単位以上 |
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流通株式 |
100億円以上 |
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売買代金 |
時価総額 |
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ガバナンス |
上場会社と機関投資家との間の建設的な対話の実効性を担保する基盤のある銘柄を選定する。 ※ より高い水準に見直し後のコーポレートガバナンス・コード全原則の適用 |
流通株式 |
35%以上 |
経営成績 財政状態 |
安定的かつ優れた収益基盤・財政 状態を有する銘柄を選定 |
収益基盤 |
最近2年間の利益の合計額が25億円以上 |
財政状態 |
純資産 50億円以上 |
スタンダード市場
項目 |
考え方 |
基準 |
新規上場基準 |
流動性 |
一般投資者が円滑に売買を行うことができる適切な流動性の基礎を備えた銘柄を選定する。 |
株主数 |
400人以上 |
流通株式数 |
2,000単位以上 |
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流通株式 |
10億円以上 |
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ガバナンス |
持続的な成長と中長期的な企業価値向上の実現のための基本的なガバナンス水準にある銘柄を選定する。 ※ コーポレートガバナンス・コード全原則の適用 |
流通株式 |
25%以上 |
経営成績 財政状態 |
安定的な収益基盤・財政状態を有する銘柄を選定する。 |
収益基盤 |
最近1年間の利益が 1億円以上 |
財政状態 |
純資産が正 |
グロース市場
項目 |
考え方 |
基準 |
新規上場基準 |
事業計画 |
高い成長可能性を実現するための事業計画を有し、投資者の適切な投資判断が可能な銘柄を選定する。 |
時価総額 |
- |
流動性 |
一般投資者の投資対象となりうる最低限の流動性の基礎を備えた銘柄を選定する。 |
株主数 |
150人以上 |
流通株式数 |
1,000単位以上 |
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流通株式 |
5億円以上 |
||
ガバナンス |
事業規模、成長段階を踏まえた適切なガバナンス水準にある銘柄を選定する。 ※ コーポレートガバナンス・コードの基本原則のみを適用 |
流通株式 |
25%以上 |