今年4月、アメリカではオバマ大統領の署名により「JOBS法」という法律が成立しました。正式名称はJumpstart Our Business Startups Actだそうで、故スティーブジョブズ氏に半ば強引に結び付けているあたり、お国柄が伺えます。
この法律は、証券規制の緩和により新興成長企業のIPO等を促進させ、米国における雇用拡大及び経済発展を図ることを主な目的としています。
緩和される規制の中で私が注目しているのは内部統制報告制度(米国SOX法404条)に関する監査の免除(IPO後最大5年間)とクラウドファンディングの解禁の2点です。後者については別の機会で取り上げたいと思います。
今回は内部統制報告に関する緩和についてですが、監査人のダイレクトレポーティング(監査人が直接会社の内部統制の有効性を評価すること)が求められる米国の場合、多額の監査フィーが発生しているようで、この点がIPO後のスモールミドルクラスの新興成長企業にとって過度の負担になっていたという背景があります。
但し、あくまで監査が不要というだけで、経営者自身による内部統制評価の報告は従前通り必要となっています。
日本でもIPOを実現した期から期初に遡って内部統制報告制度(J-SOX)が金商法により義務づけられ、監査も受けなければなりません。ただ、インダイレクトレポーティング(経営者による内部統制の有効性評価プロセスを監査人が評価すること)を採用している日本の場合、米国と比べると相対的に監査フィーの負担は小さくなっています。ですので今後日本でも米国同様の緩和が今後なされるかどうかは微妙なところではないかと感じますが、緩和要請は少なからずあるようで日本政府も経済対策の一環で協議を進めているようです。
その意味でJOBS法の発効後の米国での新興成長企業のIPO動向は注目されます。
このように、ともすれば負担のみが取り沙汰される感がある内部統制ですが、IPOを目指す経営者の方々は、一般投資家から資金を集める以上、真摯に取り組むべき領域だと思います。
例えば今後の成長を見据えた場合に、受注→売上計上→請求→入金といった販売サイクルや発注→仕入計上→請求受け→支払といった購買サイクルの管理統制は万全でしょうか。
この点はJOBS法やJ-SOX如何に関わらず、万国共通の転ばぬ先の杖だと感じます。
(加藤)