平成25年も半分が終わりました。IPO市場は引き続き好調で、昨年末から27社連続で初値が公開価格を上回っています。
好調なIPO銘柄の中で、バイオ関連企業にも注目が集まりました。
安倍首相が4月19日の成長戦略スピーチの中で、再生医療・創薬を重点分野として掲げたことも追い風になっていると思います。
そんな矢先、創薬の臨床研究データに関するニュースが報じられました。
報道の内容を、私なりの理解で要約すると以下のようになります。
・ノバルティスファーマ社(以下、ノバルティス社)の医薬品に関する医師主導の臨床研究に、ノバルティス社の社 員(当時)が関与し、研究データの操作が行われた
・データ操作の結果、当該医薬品の適応症の一部に関する京都府立医科大学チームの研究結果に誤りが生じ た可能性が高い
ただ、関係者の証言は必ずしも一致しておらず、特に「恣意的なデータ操作があったかどうか」については確認できていないようです。
真実がどうであったかは今後の調査を待つしかありませんが、ノバルティス社自身は「医師主導の臨床研究に自社元社員が関わり、かつ、研究論文に適切に開示されなかったこと」を、「日本の医師主導臨床研究の信頼性を揺るがしかねない事態」として謝罪しています。
わたしは、ノバルティス社の認識は非常に重要だと思います。
情報の操作やねつ造は論外ですが、情報作成の環境や過程に問題があるだけでも、一つの情報の信頼性が損なわれてしまうことで、情報発信者本人への信頼はもちろん、関係者全体の信頼が低下してしまうことがあり得ます。
そしてこれは、情報が飛び交う証券市場にも当てはまります。
適切な情報開示ができない会社が信用を失うのはもちろんですが、市場から発信される情報の信頼性が低下すれば、市場全体の信用が失われ、市場機能が損なわれます。
上場準備作業で、上場後の正確な情報の収集・開示が重要なテーマとなっているのは、自分のためであると同時に「上場会社の一員として、市場機能を守る」ためでもあるのです。
(原田)