IPO準備を行う際に、よくCFO(Chief Financial Officer:最高財務責任者)の配置が必要であると言われることが多いと思われます。しかし、実際にCFOの役割が今一つはっきりしないまま使われていることが多いように思えます。
まず、CFOとはどのような役割かを明確にしたいと思います。
一般的にCFOとは、経理・財務部門の最高責任者であるとともに、財務戦略を通じて経営戦略を構築、実行し企業価値を高めていく役割を担う役員であると言われています。
具体的には、以下の業務が挙げられると思います。
①投資と期待収益と事業リスクを踏まえた資金配分の決定
②最適資本構成を踏まえた財務戦略の構築
③資金調達とそのコストについての把握
④キャッシュマネジメントと財務リスクマネジメント
⑤投資家へのIR活動
単なる経理・財務の責任者だけではなく、経理・財務の情報を利用して戦略を構築して実現していくより経営に踏み込んだ役割も期待されている存在ということになります。
従って、CFOには、経理・財務の経験と知識は当然のこととして持ち合わせている必要があり、さらにそれらの経験・知識を経営戦略的な思考に活かせることが必要となってきます。
一方、上場審査上では、上記のCFOが特に必要とまでは要求していません。上場審査上は、経理、財務、総務、人事、法務等を担当する管理部門に専任の役員が配置されていることを求めています。
会社によっては、経理、財務、総務、人事、法務等に管理部門担当役員を配置している場合もあれば、総務、人事、法務等の業務に関して総務部門担当役員を配置し、経理・財務の業務に関して経理・財務担当役員を配置している会社もあるかと思います。いずれにしても、経理・財務に関しては財務諸表が適正に作成、開示され、その他適時開示に責任を持つ役員を求めているのであり、いわゆるCFOの役割とは異なる部分があります。
もちろん、特に経理・財務を統轄した上で経営に係る財務戦略等を構築していくCFOがいるのに越したことはありませんが、実際にはなかなか適任者がいないのではないかと思われます。まずは、経理の経験・知識が十分に備わっている人材を探すことが必要でしょう。経理知識がないままに財務戦略のみを担当する役員は本来のCFOではなく、監査法人との対応にも支障をきたし決算説明会等で投資家への適切な説明も不十分になってしまいかねません。
CFOがキャッシュ・フロー・オフィサーとならないためにも、経理の経験・知識を十分に備えた人材をまずは確保することが必要です。
(黒川)