エボラ出血熱の流行について、毎日のように報道されています。
ニュースを見ているうちにわかったのですが、エボラ出血熱の存在自体は非常に古くから知られており、初めての症例は1970年代の半ばです。
それから40年近く経つにもかかわらず、特効薬がないのは、
①空気感染しないため、病気が広がりにくく患者数が意外に少ない
②経済的に貧しく、また、知的財産権(特許)に対する規制が弱い地域での症例が多い
等の理由により、製薬会社が投資しづらいことが原因とのこと。
エボラ出血熱クラスになると、一企業の課題としてではなく、国際機関の活動や国家の政策として解決する問題と思いますが、試しにWeb検索してみると、オーファンドラッグやアンメットメディカルニーズ※への取り組みを自社の社会的責任として開示している企業を見つけることができました。
※オーファンドラッグ:患者の数が少なく治療法も確立されていない病気のための薬
※アンメットメディカルニーズ:未だに満足すべき治療法のない疾患領域の医療ニーズ
近年、企業環境の不確実性が増すにつれ「企業の長期的発展のために、経営者は企業を取り巻く環境とどう係わっていくつもりなのか」についての関心が高まってきました。
創薬企業が自社の社会的責任についてウェブサイトで公開しているのも、この関心の高さに応えるためのものと思いますが、直近では、さらに一歩進んで、環境・ガバナンス・戦略等の非財務情報と従来からの財務情報を統合した「統合報告書」の必要性が議論されています。
国際統合報告評議会(IIRC)は、統合報告の内容として①組織の概要と外部環境 ②ガバナンス ③ビジネスモデル ④リスクと機会 ⑤戦略と資源配分 ⑥業績(パフォーマンス)⑦見通し ⑧作成と開示の基礎の8項目を挙げています。
この8項目は、IPOの関係者であればどこかで見た記憶のある項目だと思います。
Ⅰの部とⅡの部の目次を足したような内容ですね。
また、統合報告書は、ただ財務情報と非財務情報を足して記載しただけではダメで、2つの情報を統合して「企業価値創造のストーリー」として報告しなければならないのですが、これも上場準備の初期から審査対応・ファイナンスまでのプロセスと似ているように思います。
もちろん、目次の比較だけでは詳しいことはわかりませんが、目次の対比だけでも「上場準備がいかにボリュームのある作業なのか」は実感できると思います。
(原田)