以前弊社メンバー関口のブログでIPO時に提出が必要となる「有価証券届出書」や「Ⅰの部」において、今年の6月の法改正で「特別情報」と呼ばれる3期前~5期前の期間の財務諸表(及びその注記)の記載が不要となる旨をお伝えしておりましたが、当該法改正は8月22日付で公布・施行され適用が開始されております。
今回は、当該法改正と前後して新規公開企業に対するJ-SOXの取扱いについても法改正が行われていますのでそれを取り上げてみます。
改正された法律は、内部統制報告制度(J-SOX)を規定する金融商品取引法です。具体的には第193条の2第2項が改正となり、既に5月30日に公布されています。内容としては、「資本の額その他の経営の規模が内閣府令で定める基準」に達しないIPO企業は、新規上場後に提出する内部統制報告書に係る公認会計士監査を3年間免除できるという改正です。
但し、こちらの改正法についてはまだ適用時期は公表されておらず、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとなっています。また、「資本の額その他の経営の規模が内閣府令で定める基準」については、金融庁の説明資料では「資本金100億円以上又は負債総額1,000億円以上を想定」との記載がありますが現時点では未確定と思われます。
従って、IPOが近い企業にとっては気になるところではないでしょうか。
なお、ここで注意しないといけないのは、当該改正の趣旨は、市場の活性化を図る観点から新規上場に伴う負担の軽減を目的として、内部統制の監査を免除しているのであって、内部統制報告書自体の提出は免除されていないという点です。ですので、当該法改正に関わらずIPO準備会社は内部統制報告制度(内閣総理大臣への内部統制報告書提出(EDINET))への対応を準備しておく必要があります。
内部統制報告制度は、フレームワークがとっつきにくく準備着手が遅れがちですが、まずは簡単に販売や購買に関する事務フローを作成されることをお勧めします(はじめから凝ったものを作成する必要はありません)。当該事務フローは上場申請の際に求められる資料でもありますので、作業自体は無駄にはなりません。
一般的には、受注から仕入れ・生産、納品及び代金の回収・支払いに至るまでの主な事務フローが対象となりますが、ポイントは現業部門での承認と経理入力時のチェックがしっかり行われているかどうかです。また、そのタイミングも重要です。ここが曖昧だったりタイムリーではなかったりする会社は改善の必要があります。
このあたりは日々の業務に忙殺されているとなかなか気づくことが出来ません。だからこそ上場準備の過程の中で意味のある領域でもあるように感じます。
実はこのテーマは、J-SOX対応の有無に関わらず従来から上場審査では確認されてきた事項です。
今般の法改正により、時折、上場準備ではJ-SOX準備が不要との誤った認識が聞こえてきたりもしますが惑わされないようご留意ください。