最近のドル/円の為替レートは、この1ヶ月で約10円のドル高円安となり、現在、1ドル=116円程度で数年ぶりのドル高円安の状況となっています。一方、株式相場は、この1ヶ月で日経平均株価が約2千円程度上昇しており、円安、株高の傾向となっています。これは、以前より、円安になれば株価は上昇するという相関関係が存在することが定説とされてきており、実際に最近の為替状況と日経平均株価を比較すると円安と株価の相関関係は成立していると思われます。
この相関関係の一般的な理由は、基本的に日経平均に組み入れられている企業は輸出企業が多く、円安になれば業績に有利に働くことから株価も円安に連動して上がるからだと言われております。
確かに、輸出企業にとっては、円安が有利に働くわけですので業績が良くなると想定されますが、最近は現地生産比率も上昇しており、円安になっているにもかかわらず輸出が期待どおりに伸びていないようなことも聞かれます。
最近の円安、株高に関しては、海外投資家の存在が大きいように思われます。
アベノミクス以降、海外投資家が積極的に日本株を買っていることと関係があると考えられます。最近では、海外投資家の売買シェアは5割を超えている水準になっているようです。海外投資家は、ドルを円に換えて日本株を購入するとともに、為替ヘッジのために円売りも組み合わせて投資しています。ここで、円買いと円売りはニュートラルなポジションとなりますが、株価が上がると値上がり益を確定させようとするためにその分だけ追加で円売りをすることで、円売りが生じて円安となることも考えられます。これは、逆に株高が円安に影響するもので、円安、株高のスパイラルを生じさせることにもなりえると思われます。
また、日経平均株価をドル建てで見た場合、円安、株高の相関関係を考慮すると、ドル建てでは株高分が円安で打ち消されてあまり高くなっていない状況から、日本株の割安感となり、日本株の買いに繋がっていることも考えられます。例えば、1ドル=105円の場合、14,500円の日経平均株価はドル建てでは、138ドルとなりますが、1ドル=115円の場合、16,000円の日経平均株価はドル建てでは、139ドルとなり、ほぼ同じ株価となります。
為替の影響は、様々な形で株価に影響してきており、その時の状況でその相関関係も変化するとは思いますが、現在のような海外投資家主体の状況では、円安、株高は当分続くのかもしれません。
一方、為替レートは、円高、円安を周期的に繰り返すとも言われており、いずれは今の円安局面から円高局面に変わるのでしょう。そうなった場合に、円高、株安の相関関係となるのでしょうか。
(黒川)