最近、上場企業など公益性の高い会社や団体における不祥事に関して、「第三者委員会の設置」や「第三者委員会による調査報告」という報道をよく見かけます。
第三者委員会は、不祥事を起こしたとされる企業等から独立した委員のみで構成され、問題の取引等に関する調査、原因分析、再発防止策の提言等を行う組織です。
第三者委員会に関しては、2010年に日本弁護士連合会から「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」が公表されており、「企業等は第三者委員会から提出された調査報告書を、原則として、遅滞なく、利害関係者に開示しなければならない」とされています。
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法律や会計等の専門家から構成される第三者委員会がまとめた調査報告書は、短期間の調査とはいえ、質・量ともに圧倒的で、実際に不正があった場合には、その背景や手口が詳細に説明されています。
何件かの調査報告書を読んでみて気づいた点があります。
不祥事の内容は企業によって様々なのですが、ほぼ共通して言えるのは、「不祥事の発生防止や早期発見のためのルールがなかったわけではなく、ルールを守っていなかったことが不祥事発生の原因であった」ということです。
言い換えれば、「ルールを守っていれば、不祥事を防止し、または早期発見することができたかも知れない」ということです。
これをIPOに置き換えて考えてみます。
IPO審査では、社内の様々な業務に関して「規程」が作成され、十分に運用されていることが、証券会社と取引所により確認されますので、新規上場会社は、上場時点では一定レベル以上のルール運用が行われていると考えられます。
したがって、上場後も重大な不正やミスを起こさない会社であるためには、上場準備段階で、①上場後も継続してルールを運用し、②業容や法律の変化に伴い適時適切にルールを更新できる体制を作り上げる必要があります。
ルールを作成し、一時的にでも運用させること自体、非常に大変な作業ですが、これを継続させる体制を作るとなると、それ以上に手間と時間がかかります。
IPOに関しては、関連制度の緩和により、短期間での上場が可能になったといわれますが、より短期間でこれだけの体制を作り上げなければならないとすると、上場準備の難易度は上がっていると考えることもできます。
(原田)