㈱日本取引所グループは、2015年3月31日に「最近の新規公開を巡る問題と対応について」を公表しました。
同社はこの文書の中で「最近、新規公開会社の経営者による不適切な取引など、新規公開に対する株主・投資者の信頼を損ないかねない事例が散見される」とし、新規公開の品質確保に向けて
①経営者の不適切な取引に対する上場審査の強化
②上場時に公表される業績予想について、前提条件やその根拠の適切な開示の要請
などの対応策を打ち出すとともに、証券会社や監査法人へ協力を要請しています。
ただ、この種の問題については、証券会社や監査法人でも完璧なチェックを行うことは困難です。重要なのは「IPO関係者が協力し、少しでもチェックの範囲を広げること」ではないかと思います。
たとえば、私たちコンサルタントは上場準備に際して、上場準備会社の役員はもちろん、たくさんの社員の方とも打合せをします。
ですから(会社の経営や財務報告に重大な影響を与える事項は審査や監査にお任せするとして)、将来、不祥事につながるかも知れない「ちょっとした綻び」の情報をすくい取るのは、会社の内部に入り込むコンサルタントの得意分野といえるかも知れません。
もっとも、こうして集めた情報の取扱いには、守秘義務の問題以外に以下の注意が必要です。
①噂レベルの話や思い込みも多いので、情報の真偽に注意
②情報が事実であっても、会社の経営等と関係ない誹謗中傷には関わらない
③あくまで経営改善の視点で対応する(コンサルタントはスパイではない)
このような制約を理解した上で情報を利用することができれば、上場審査を巡る上記の問題に、私たちも微力ながら貢献できるのではないかと思います。
(原田)