プロジェクト管理の一つに、プロジェクトにマイナスの影響を及ぼすリスクを洗出し、事前に対策を講じておくことによりその影響を最小にするリスク管理手法があります。
上場準備をする際においても、上場に支障をきたすような今後想定される様々なリスクを最初にある程度想定して、その対策を考えておくことは上場準備を円滑に進めるためにも必要であると思われます。
一言に上場に支障をきたすリスクといっても、様々なリスクがありますが、例えば思いつくままに挙げるとすれば、以下のようなリスクが考えられます。
■内部環境要因によるリスク
①管理系の人員不足等により、準備作業が遅れる。
②IPO準備期間が短すぎる。
③経営者側がIPO準備業務を軽く考えている。
④社内全社の協力が得られない。
⑤法令違反等が発見された。
⑥M&A等による子会社化した会社の経営管理体制構築に時間を要する。
■外部環境要因によるリスク
⑦株式市況の悪化により、想定株価に到達せずに計画どおりの公募資金調達ができなくなる。
⑧大株主側の方針変更、または大株主の意向により上場延期、または中止となる。
⑨上場審査環境の変化による審査厳格化。
⑩業績が利益計画どおりに達成できない。
ここで、内部環境要因によるリスクは、会社内での上場準備状況に関連するリスクであり基本的には自社内で解決が可能となるリスクです。
従いまして、時間と労力は要すると思われますが、集中的に人的資源を投入すれば解決ができることとなると思われます。早めにリスクを洗い出して対応に充分な期間を設けるのが効率的な方法でしょう。
一方、外部環境要因によるリスクは、会社外の環境変化によって、上場準備に支障をきたすリスクであり、基本的には会社外に要因があるために社内で努力しても解決ができないと思われるリスクです。
なお、業績については、業績を計画どおりに達成させることは経営努力によってある程度可能であると思われますが、ここでは経営努力を実行したうえでも計画どおりに達成できていない場合を想定しています。
このような外部環境要因によるリスクは、対策としては施し難い面があると思われますが、発生可能性等を鑑みて発生した際の事態をある程度想定しておくことも必要でしょう。
(黒川)