東芝の「不適切な会計処理」に関して、7月20日に第三者委員会の調査報告書が提出されました。報告書では、問題案件ごとの詳細な分析に加えて、各案件に共通する直接、間接の原因について分析を行っています。
報告書では、各案件に共通する直接的な原因の1つとして「当期利益至上主義と目標必達のプレッシャー」を挙げています。
この「利益至上主義」は、不適切な会計処理が発覚した会社で、その原因としてよく指摘される事項です。
上場準備会社でも、内部統制整備の際に「利益至上主義の傾向がないか」について気を配らなければなりませんが、実務上は、以下のような論点を含んでいます。
①利益の追求は必ずしも悪いことではない
利益の追求は株式会社の目的そのものです。利益至上主義として問題になるのは、あくまで行き過ぎがある場合です。
②利益追求の「行き過ぎ」について直接議論するのは難しい
審査や監査に携わっていれば、ある程度感覚的に「行き過ぎである」ということはわかります。しかし、利益追求に行き過ぎがあるかどうかについて、経営者と観念的な議論をしても、水掛け論になることが多いと思われます。
結局、問題が起こっていなければ「正常(行き過ぎではない)」、問題が起これば「行き過ぎ」という結果論になりがちです。
このように「利益至上主義」の問題は、その適否の境目の判断が非常に難しいため、適切な判断のためには、周囲の雰囲気に流されない「ぶれない価値観」を磨いておくことが特に重要であると感じています。
(原田)