最近の経営者不正等を踏まえて、監査法人に対する期待ギャップが高まっているかと思われますが、監査役に対しても一昔前とは異なり、社会の監査役への期待が高まっているように思われます。
監査役は、コーポレート・ガバナンスの主要な役割を担っており、監査役会設置会社の場合における常勤監査役に関しては、会社法上、監査役は取締役の業務執行を監督する立場にあり、経営者の不正、暴走を未然に防止する役割を期待されています。最近の経営者不正等を鑑みると、監査役の役割に対する期待が高まっている一方で実際の監査役の業務に関する期待ギャップがかなり存在すると思われます。
実際に、監査役として、経営者の決定、行動が法令に準拠しているか否かに関して判断するには、会社法その他多くの法令を把握していなければならず、また財務諸表の虚偽表示を防止するには経理・財務の知識、経験が必要となります。
社外監査役に、法律専門家、会計専門家を選任していて社外監査役が機能していれば、常勤監査役の法律、経理財務の経験、知識もそれ程必要ないと思いますが、それでも、常勤監査役にはある程度の知識が必要となると思われます。
IPO審査において、監査役に対してコーポレート・ガバナンスの主要な役割である期待がされており、主幹事審査及び東証審査において監査役面談がそれぞれ審査の最終段階で実施されます。
監査役面談に対応するのは常勤監査役であり、最近、監査役面談を通じて審査側からの要求水準が高くなってきている状況です。
監査役面談は、口頭で質問に対して回答する形で確認がなされますが、中には審査の質問の意図が理解できなかったり、的外れな回答をしてしまう監査役もいたりするようです。審査側からの監査役への要求水準と実際の監査役の水準とに開きがあり、期待ギャップがあるように思われます。
日頃から、監査役としては、法令、会計基準等の改訂に把握し、経営者の動向に気をつけ、取締役会その他重要な会議体に出席し、重要書類の閲覧、実地調査をすることが重要となりますが、社内の情報を得るためには社内のコミュニケーションを図ることも重要となります。特に経営者とのコミュニケーションを図り、経営者の方針等を理解しつつ、コーポレート・ガバナンスの重要性について経営者に理解を積極的に促すことも必要でしょう。
(黒川)