近年、企業のコーポレート・ガバナンス改革が重要な課題となっておりますが、そのコーポレート・ガバナンス改革の一つに社外取締役の活用があります。東京証券取引所においても独立社外取締役の選任を要請しており、またコーポレート・ガバナンス・コードにおいても独立社外取締役の複数名の選任を定めています。社外取締役を選任し、活用することで、経営における業務執行の妥当性の監督を強化し、経営の透明性とともに企業の成長性を高めることが狙いです。
実際に、東京証券取引所の最近の調べによりますと、東証全体で、約9割の会社が独立社外取締役を選任していることとなりますが、東芝の例を鑑みるに、実質的に独立社外取締役が機能している会社はあまり多くないのではないでしょうか。
独立社外取締役を選任したとしても、形だけのものでは意味がなく、独立社外取締役に対して十分な情報を提供し、独立社外取締役は意見、提言を活発に発し、その対応を真摯に検討する会社の姿勢がないと独立社外取締役は機能しないのでしょう。
取締役会等にて、社外取締役及び社外監査役等の社外役員は必要に応じて適切に発言し、会社はその発言を尊重し経営に反映させることが重要と思われます。
特に、社外役員が適切な意見を述べているにも拘らず、その意見に対して特に対応しない等の状況があるのであれば、形だけの社外役員であり、コーポレート・ガバナンスは機能していないと思われます。
以前、新聞に、大手企業の取締役会は著名な社外役員が選任されているにも拘らず、社外役員の意見は、あまり真剣に対応しておらず、執行側に社外役員を活用しようとする熱意が感じられないとの記事がありました。
このような状況を改善するために、社外役員の活動状況の開示を強化することは一つの方法と思われます。現在は、年に1回作成される事業報告の社外役員の主な活動状況にて、1年間の取締役会の出席回数を開示し、発言状況も総括的に開示していますが、具体的な意見・提言の内容は開示されておりません。例えば、現在の開示項目に加えて、社外役員が提言・意見した回数・内容とその提言・意見に対して会社が対応した回数・内容を開示すようにすれば、社外役員が実際に会社に対して積極的に提言等をしているか、その提言に対して、会社は適切に対応しているかが「見える化」され、形だけの社外役員は少なくなるものと思われ、会社も社外役員の意見をより重視するものと思われます。社外役員に関しても、意見、提言が「見える化」されることにより、的を得た適切な意見を慎重に発する効果があると思われます。
社外役員の実効性を高めるためには、このような具体的な開示を上場会社に適用することを検討しても宜しいのではないでしょうか。
(黒川)