最近の東証の審査は特に厳しくなったという声が多くなっています。
では、何をもって厳しいと言っているでしょうか。
私は過去の状況を見る限り審査が甘いと感じることが多くありました。最近の傾向は基本的には「見るべきものを見ている。」「調べるところを調べている。」審査になってきていると思います。しかし、厳しいという感じで受け取っているIPO関係者が多いのが実情です。それは、どうも視点が違うところにありそうです。
厳しいという感じが増えてきた背景には東証の理事会にも原因があるようです。
東証への上場申請後、審査が概ね完了すると東証内では理事会での承認手続きに入ります。この理事会で待ったがかかることが多くなってきたと言うのです。
過去はこのタイミングでダメ出しが出ることは殆どありませんでした。理事会の段階で問題になると対処する時間がなく、タイムアウト、すなわち、該当する会社の上場日は少なくとも延期することになります。すると、上場申請会社は既に届出書や目論見書の校了が終わるか、或るいは、印刷をしだしているケースもあり、損失が生じることにもなります。また、その会社の担当をしているIPO業界関係者も、その後の日程が大幅に狂うため業務上相当混乱するとのことです。
このような悪影響を改善するため、東証内では理事会で問題になりそうな会社については申請前に対応するなどの工夫がなされるようになりました。しかし、これも混乱を引き起こしているのが実情ではないかと思われます。
例えば、主幹証券会社が東証に事前相談に行く場合、東証の審査部は理事会を意識し過ぎて①一度承認されたと思っても急に再度ダメ出しが出るケースがある。②急にハードルが高くなりすぎている。③審査部よりタイムリーな回答が来ない。④改善の方向性がはっきり示されず、何度も質問が小出しに出るなどの混乱が出てきています。
そもそも実質基準では絶対的な答えがなく、また、時代背景や何だかの情勢変化(不祥事会社が増えるなど)で判断に差が出ることもあるだけに、理事会を意識すると審査部も判断に迷いが出るのかも知れません。また、申請前の場合は、東証審査部も一度も行ったことも会ったこともない会社の判断は難しいと言える余地はあるかも知れません。
それにしても審査判断のレベルの予測がしにくく対処方法が決まらず、時間だけが過ぎていく事もあるのは困ったものです。
東証内で何とかもう少し改善頂くことを期待したいと言うところでしょうか。
(鈴木)