厚生労働省が、今年の5月よりいわゆる「ブラック企業リスト」(労働基準関係法違反の疑いで送検された国内企業のリスト)を公表しています。随時更新しているようですが、電通、パナソニック、HIS、三菱電機等の上場会社もこの「ブラック企業リスト」に名を連ねています。
ブラック企業とは、従業員に過重なノルマや度を超した長時間のサービス残業を課すなど違法性の高い働き方を強いたり、精神的ないじめや嫌がらせ、賃金の未払いなどが常態化しているような企業のことであり、求職者にとってはブラック企業には就職したくないと思うのは当然であり、特に新卒者にとってはブラック企業を見分けることが重要となっています。
電通、パナソニック、HIS、三菱電機については、いずれも三六協定を超える長時間労働をさせたとして「ブラック企業リスト」にリストアップされています。
このように名だたる上場企業が、ブラック企業として認定されていることを踏まえると、上場企業→株主価値の増大化による株主への利益還元を目的→短期的な業績拡大を目的→従業員に長時間労働を強いる という流れが想定される可能性があります。
最近の新卒の就職においては、「電通」のイメージが強いとは思いますが、「上場企業は、株主のために利益追求をするがゆえに長時間労働を強いる会社が多いので、非上場企業の方が従業員を大切にする」と思っている方が多いということを聞いています。
企業が上場する目的の一つに「優秀な人材の確保」というのがあります。これは、上場による知名度向上、信用力向上により、新卒採用においても優秀な人材が確保できるということです。
しかしながら、上場会社は、株主の利益第一で従業員を犠牲にするということになってしまうと、優秀な人材は逆に敬遠する事態となってしまいます。
本来は、優秀な人材の確保ができないと将来的には業績にマイナスの影響を及ぼし、成長性も損なわれて株主価値も毀損するものですが、短期的な業績に拘る会社がある限り、上場会社であるからといって優秀な人材が確保できるとは限らない状況となり、さらに言えば上場会社であるがゆえに人材の確保が困難になるという状況も想定されるかもしれません。
そこで、対応としては、例えば、上場会社が毎年開示している有価証券報告書の従業員の状況に、平均残業時間、三六協定の内容、三六協定を超過した実績等を開示することとすれば、一定の抑止力になるのではないかと思われます。
サービス残業があるのであれば、そもそも残業時間の開示が虚偽記載となるので、会社は金商法に基づく罰則を受けることとなり、サービス残業の歯止めにもなりうるはずです。
法定開示書類に開示することで、上場企業の中でもブラック企業とそうでない企業との区別がある程度可能となり、優秀な人材の確保にも貢献できるのではないでしょうか。「働き方改革」で検討していただきたい施策の一つと思われます。
(黒川)