コーポレートガバナンス・コードは、成長戦略としての上場会社のコーポレートガバナンス改革の一環として2015年に策定され(2018年6月に一部改訂)、運用開始からすでに4年が経過しました。
「コーポレートガバナンス」とは、会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みを意味します。コーポレートガバナンス・コードは、実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめたものであり、これらが適切に実践されることは、それぞれの会社において持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のための自律的な対応が図られることを通じて、会社、投資家、ひいては経済全体の発展にも寄与することとなるものと考えられています。
ただし、法令とは異なり、法的拘束力を有する規範ではなく、その実施に当たっては、いわゆる「コンプライ・オア・エクスプレイン」(原則を実施するか、実施しない場合には、その理由を説明するか)の手法が採用され、上場会社は、それぞれの自社の個別事情に照らして各原則を実施しない場合には、その理由を説明することとされています。
上記のような理念を掲げ運用を開始したものの、コーポレートガバナンス・コードについては、「企業価値の向上に資していない」「形式的な対応にとどまり実質を伴わない」「欧米諸国を中心とした主要国のコーポレートガバナンスと同じ方向を向いており、日本企業の実態と会わない」等様な批判も存在します。
一方、上場準備における実務では、上場準備会社が主幹事証券や監査法人から様々な指摘事項を受け、「なぜそのような対応をしなければならないのか解らない」といった声をよく聞きます。そこで、コーポレートガバナンス・コードを読んでみると、指摘事項に関する理念や意義が記載されていることが多々あります。例えば以下の項目等です。
(括弧内は関連するコーポレートガバナンス・コードの補充原則)
・Ⅰの部における開示の充実(補充原則:3-1)
・関連当事者取引(補充原則:1-7、4-3)
・内部通報制度(補充原則:2-5)
・取締役会の強化(補充原則:2-5、4-13)
・監査役監査の強化(補充原則:4-4)
・中期経営計画の策定・予実分析(補充原則:4-1)
・独立社外取締役の選任(補充原則:4-8、4-9)
各指摘事項の趣旨を理解する一助として、コーポレートガバナンス・コードを参考することは非常に有用と考えられます。コーポレートガバナンス・コードは「第4章 取締役会」のボリュームが最も多く、特に取締役会の機能を重視していることからも、上場を目指す取締役の皆様は、上場準備の早い段階で一読する価値があると思われます。
(古川)