WHOがパンデミックとの認識を示すなど、新型コロナウイルス感染症の流行(以下「新型コロナ」とします)はとどまるところを知りません。
上場準備(審査)では、「新型コロナ」の足元の業績への影響の確認が必要となりますが、同時に「投資判断に重要な影響を与える事項としてどのように開示するか」についても検討する必要が出て来ます。
今回は、今年上場を承認された会社が、有価証券届出書の「事業等のリスク」の中で「新型コロナ」に関してどのように開示しているか、見ていきたいと思います。
①保育事業、介護事業
「新型コロナ」の前から、保育事業や介護事業を行う会社は、施設内での事故や感染症について開示するのが普通だったように思います。
最近の事例を見ると、㈱Kids Smile Holdings(幼児教育事業)は、「施設内で新型インフルエンザやノロウィルス等の感染症が発生した場合、施設運営に支障が出る可能性がある」としています。
また、ミアヘルサ㈱(介護事業、保育事業など)も「感染症の流行や拡大により、事業所の稼働ができなくなった場合の業績への影響の可能性」について記載しています。
②スポーツジム
厚生労働省の専門家会議の報告で、感染事例に挙げられた業種です。
㈱Fast Fitness Japanは、「インフルエンザ等の感染症の大流行により長期にわたる営業休止を余儀なくされた場合の業績への影響の可能性」について記載しています。
なお同社については、上場日(3月18日)を目前に控えた3月13日に、上場の中止が発表されています。
③海外事業展開
海外事業展開を行う会社の場合、当該エリアでの政情不安、通貨危機、自然災害などが会社の事業継続に影響を与えると開示することが多く、経営に影響を与える事例として「感染症」や「疫病」を挙げている会社もありました。
4月6日に上場予定の㈱松屋アールアンドディ(縫製自動機事業、縫製品事業)は、上記の一般的な記載に加え、「主力製品の仕入先及び販売先等に中国拠点があるため、「新型コロナ」の今後の経過によっては、事業活動等に影響を及ぼす可能性がある」と説明しています。
以上、最近の新規上場会社の「新型コロナ」に関する開示事例を見てみました。
新規上場会社の場合、上場準備の過程で主幹事証券が直接指導するため、開示内容について細かい検討が行われているように思います。
今後は、上場後の会社が自力で、有価証券報告書にどのような開示をするかについても見ていきたいと思います。
(原田)