2020年3月期以降の事業年度に係る有価証券報告書のレビューについて、金融庁から概要がリリースされました。金融庁は、上場会社等から提出された有価証券報告書の記載内容についてより深度ある審査を行うため、毎期、有価証券報告書レビューを実施しています。レビューの内容は「法令改正関係審査」「重点テーマ審査」「情報等活用審査」から構成されています。
各項目の審査概要は以下のとおりです。
・法令改正関係審査
全ての上場会社が対象となります。金融庁のホームページに「調査票」がアップされており、上場会社は法令改正の適合状況について「YES」or「NO」の形式で回答し所管の財務局等に提出します。「調査票」に基づき開示の適正性が審査され、「調査票」の記載内容に不明点や疑問点がある場合には、別途質問が行われます。
・重点テーマ審査
所管の財務局等から指名された上場会社が調査対象となります。金融庁は、毎期重点テーマを設定し、個別の質問状が送付されます。法令等及び一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に照らして、会計処理・開示の適正性が審査され、回答内容に不明点や疑問点がある場合には追加で質問が行われます。
・情報等活用審査
上記に該当しない場合であっても、適時開示や報道、提供された情報等(開示義務違反等に関する金融庁の情報受付窓口「ディスクロージャー・ホットライン」からの情報等)を勘案し実施されます。審査対象となる会社には、所管の財務局から個別の質問事項が送付されます。
2020年3月期以降の事業年度に係るレビューでは、「法令改正関係審査」については、2019年1月の開示布令改正により記載の充実が求められている「経営方針・経営戦略等」「事業等のリスク」「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」の審査がポイントとなります。特に「事業等のリスク」については開示布令上、顕在化する可能性の程度や時期、リスクの事業等へ与える影響の内容、リスクへの対応策の説明が求められており、従来の開示と比較し踏み込んだ記載が求められています。
また「重点テーマ」審査については「セグメント情報」等が設定されています。審査の内容としては「セグメント情報等の開示に関する会計基準」「同適用指針」への適合状況、財務情報と記述情報の関連性・整合性が示されています。
上場準備段階においては「有価証券報告書」の作成は必要ありませんが、上場準備段階で作成が必要となる「Ⅰの部」「有価証券届出書」等は有価証券報告書と記載内容がほぼ同じものになります。今期審査対象項目となる「事業等のリスク」「セグメント情報」は、上場準備初期段階で十分な検討がされていないケースも存在しますが、上場後の開示も踏まえ、マネジメントレベルでの十分な検討が望まれます。
(古川)