2020年7月、東京証券取引所は、「資本市場を通じた資金供給機能向上のための上場制度の見直しについて」を公表し、新市場区分の形式基準や、移行スケジュールが示されました。2020年11月1日以後に新規上場申請する会社については、新市場区分における新規上場基準が適用されることとなります。
上場基準等
市場区分 |
改正内容 |
市場第一部 |
一部指定・市場変更に係る流動性基準の共通化による中長期的な企業価値向上の促進(時価総額250億円、流通株式時価総額100億円、株主数800人等) 赤字上場の緩和(売上高100億円以上かつ時価総額1,000億円以上の赤字企業を含め、短期的な業績動向によらず、実質的な収益基盤や開示状況を確認) |
マザーズ |
流動性基準の緩和による新規上場の裾野拡大(上場廃止基準と統一) 事業計画に係る開示制度の拡充による投資者の信頼性向上 |
本則市場(市場第二部)/JASDAQスタンダード |
規準統一による新規上場の予見可能性向上 本則市場(市場第二部):流動性基準等の緩和による新規上場の裾野拡大 JASDAQスタンダード:ガバナンスコード適用による投資者の信頼性向上 |
(東京証券取引所:「資本市場を通じた資金供給機能向上のための上場制度の見直しについて」より作成)
株主数や流通株式数等の形式基準は一定程度の緩和がなされていること、赤字上場についてもより実質的な判断がなされていくことが大きな方向性といえそうです。
この中でIPO準備会社、特にマザーズ市場、JASDAQスタンダード市場をダーゲットにしている準備会社においては以下の点に留意する必要があります。
■ マザーズ市場に上場申請を予定している会社
マザーズの上場会社は、投資家に合理的な投資判断を促す観点から、「事業計画及び成長可能性に関する事項」を継続的に開示することが求められます。従来から、上場時に「成長可能性に関する説明資料」の開示を行う必要がありその点で変わりはありませんが、
・取引所より「作成上の留意事項」が示され、記載項目や記載のポイントが従来と比較し詳細に定められていること
・新規上場時のみでなく継続開示や内容の更新が求められていること
が重要な変更点となります。
もともとIRを重視し準備を進めている準備会社にとっては問題無いと思われますが、取り組みが遅れている準備会社については、上記の変更に留意する必要があります。
■ JASDAQスタンダード市場に上場申請を予定している会社
JASDAQ市場においては、コーポレートガバナンス・コードは基本原則のみの適用でしたが、スタンダード市場(仮称)においては、全原則が適用されることになります。
JASDAQスタンダード市場に申請を予定している準備会社は、各原則についてコンプライするのかエクスプレインするのかを検討し、コーポレートガバナンス・コードの適用について早めに準備する必要があります。
(古川)