2020年は、いわゆる物言う株主であるアクティビストからの株主提案が多い年となりました。
例えば、2020年10月に東証1部に上場している「東京ドーム」が、9.6%程度を保有する大株主である香港のアクティビストファンドである「オアシス・マネジメント」から経営者等の解任を求める臨時株主総会の請求を受けました。「東京ドーム」は、大株主である香港のファンド「オアシス・マネジメント」と以前より対立しており、その後、三井不動産が友好的な買収者(ホワイトナイト)として名乗りを上げ、1,200億円規模の株式公開買付(TOB)を実施して、東京ドームを子会社化して非公開化する予定となっています。
さて、アクティビスト(Activist)とは、株主としての権利を積極的に行使して、企業に影響力を及ぼそうとする投資家を指します。一定数以上の株式を保有し、投資先企業の経営者に対して経営戦略などを提案することで、その価値を高めて最終的に利益を得ようとする投資ファンドがその代表格です。
アクティビストファンドの具体的なターゲットとなるのが、資本効率性が低い企業や株価が低迷している企業であり、ROE8%未満やPBR1倍未満の企業が該当します。これらの企業は、経営上の改善余地が多く残されていると判断されていると思われます。
2000年代のアクティビストファンドは、余裕資金を貯めこんだ企業への株主還元や買収提案がメインで「ハゲタカ」と呼ばれ強引な手法が目立っていましたが、最近のアクティビストファンドは少量の株式を取得して水面下で経営陣に接触して、経営戦略や経営陣の変更、社外取締役の設置、IR機能の改善等のコーポレート・ガバナンス改革などを提案することで合意形成を図る手法が主流になっています。
実際に、東京ドームの場合、香港のアクティビストファンドは、臨時株主総会を請求し、コーポレート・ガバナンス改革策として社外取締役の適格性に疑義があるため社外取締役の解任の株主提案をしています。
最近のコーポレートガバナンス・コードやスチュワードシップ・コードの浸透により、企業価値重視の流れが強まる中、アクティビストファンドが介入することでコーポレートガバナンスが強化され、企業経営が活性化し、企業価値が高まるのであれば、日本の株式市場全体としては望ましい存在となるのでしょう。
今後、アクティビストファンドがより活発に日本企業をターゲットとすることが予想され、コーポレート・ガバナンスの強化が不充分な会社や、企業価値が実態よりも低迷している会社等は、アクティビストファンドのターゲットとなる可能性があります。アクティビストのターゲットとされないよう、日頃からコーポレート・ガバナンス強化を実践し、企業価値を高めておくことが必要と思われます。
(黒川)