先月シンガポールを訪れる機会があったのですが、街中でゆっくり過ごせたのは新婚旅行でのトランジット以来でしたので約20年ぶりとなります。20年前のシンガポールドルは1円あたり約60円程度でしたが、先月は約100円ということで1.6倍の円安です。物価では、日本ではようやくデフレが収まってきたというレベルですが、シンガポールではこの20年間で1.5倍(CPIベース)になっているようです。GDPでは3.5倍の成長ということでうらやましい限りです。実際、マリーナベイでの噴水ショーも20年前の大味な感じからは様変わりし、対岸の摩天楼を背景にマリーナベイサンズのホテルからのライティングと連携したより華やかな内容に様変わりしていました。ただ、屋台で食べる料理は20年前と同様に美味しかったです。
さて、そんな時間を過ごしたこともあり、先輩に進められていた「物価とは何か」を読了しました。この本はもと日銀マンで現在は東大教授である渡辺努氏の著書ですが、物価にまつわる理論や中央銀行や政府の物価への対峙の歴史が、私のような素人でも理解しやすい(わかった気にさせられている?)内容でした。
・物価水準の財政理論(FTPL)
・ラスパイレス指数
・パーシェ指数
・フィッシャー指数
・トルンクピスト指数
・フィッシャー効果
・テイラー原理
・フィリップス曲線
・自然失業率仮説
・合理的予想仮説
・ゲーム理論
・合理的無関心理論
・ナラティブ経済学
・ボルカーのディスインフレ
・メニューコスト仮説
・情報制約仮説
と、どれも敬遠したい響きの表題ですが、難しい専門用語抜きでとても分かりやすく解説してくれています。また、そこにまつわる歴史や経済背景も改めて再認識できました。もと日銀マンということもあって実務感覚に根差した著者の引き出しの豊かさが感じ取れます。
IPO準備の現場でも多くの引き出しを求められるので、本書の構成や話の進め方、話し方は自分自身のコンサル領域に照らしても気づきを与えてくれる良い機会となりました。
(加藤)