この数日間の東京株式市場では、日経平均株価が続伸し、3万1,000円を上回りました。これは、バブル経済崩壊後の高値となり、1990年7月以来およそ33年ぶりの高値となりました。
これは、海外投資家の日本株買いの状況が続いており、高値の原動力となっているとのことです。ここ最近急速に利上げを進めてきた米欧に比べ、日本は拙速な金融引締めには動かないと推測されているため未だ相対的な買いの余地があり、またコロナ禍からの経済再開が欧米に遅れて始まったことでインバウンド消費もこれから拡大することが予想される他、円安に伴う輸出企業の業績を押し上げるとの期待が高まっているとのことです。また、東京証券取引所による低PBR(株価純資産倍率)対策も海外投資家には日本株式市場が変化するとの期待に繋がっているとのことです。
一方、日経平均株価をドル建で見た場合、ドル建では最近の円安により株高分が打ち消されるため割高にはなっていない状況から、海外投資家にとっては日本株に対する割安感があり、日本株の買いに繋がっていることも考えられます。
実際の例で、確認してみたいと思います。為替レートが比較的円安になる前の2022年1月の為替レート及び日経平均株価と現在の為替レート、日経平均株価を比較すると、以下のとおりとなります。
・2022年1月の為替レート:1ドル=約115円程度、2022年1月の日経平均株価:約28,000円程度
・現在の為替レート:1ドル=約138円程度、現在の日経平均株価:約31,000円程度
上記のとおり、2022年1月の為替レートは、1ドル=約115円程度でしたが、現在は1ドル=138円程度となっており、1年4か月で約20%円安となっています。
一方、日経平均株価は、2022年1月は、約28,000円程度であったのが、現在は31,000円程度となり、10%程度の株高となっています。
従って、ドル建の日経平均株価では、2022年1月頃は約243ドルとなりますが、現在の水準は約224ドルとなり、海外投資家にとっては割安感が充分にある状況になっていると考えても良いと思われます。
なお、現在は1ドル=138円程度と近年にない円安となっていますが、この水準はバブル経済の頃の33年前の為替レートとほぼ同じ水準でもあることを踏まえると、円安⇒株高という相関関係が存在していると思われます。
また、最近の物価上昇が顕著な状況も、物価上昇が企業収益に転嫁できているという前提であれば企業業績にはプラスとなりますので、一般的には株価にもプラスとなり、株高に繋がっているものと思われます。
基本的には、今回の株高は円安による影響が大きいと思われますので、日本が金利引上げ等の金融引締め政策に転換すると、逆に円高となり株価も影響を受け安くなることが想定されます。金利政策による為替レート及び株式市場への影響を考慮する上で、植田日銀新総裁の今後の判断が注目されます。
(黒川)