東京では梅雨が明けた途端、連日の猛暑日となっておりますが、前職の監査法人時代には、長かった3月決算会社の監査が6月下旬頃からようやく落ち着き、7月に入ると少し心に余裕が出る時期だったことを思い出します。監査法人に関連して、この最近7月に気になる新聞記事が出ていました。
それは、2023年7月15日の日本経済新聞の「金融庁、準大手監査法人を2年ごと検査 頻度高める」という記事です。これまで、大手監査法人については2年に1回の頻度で金融庁傘下の公認会計士・監査審査会による検査(以下、「金融庁検査」という)が行われていたのに対し、準大手監査法人(仰星、三優、太陽、東陽、PwC京都の5社)については3年に1回の頻度で金融庁検査が行われていました。今般、上場企業の監査法人が大手から準大手や中小の監査法人に移っている状況を踏まえ、準大手監査法人に関しても金融庁検査の頻度を大手監査法人と同じ2年に1回へと頻度を上げ、検査を通じて監査の質を確保する、とのことです。
では、上場企業の監査法人が、大手から準大手や中小の監査法人に実際どのくらいのペースで移っているのでしょうか。東京商工リサーチが公表している上場企業の監査法人の異動に関する調査結果によりますと、2022年(1月~12月)に監査法人の異動を開示した上場企業は241社(前年は214社で前年比12.6%増加)で、そのうち「大手→中小」が106社(前年比21.8%増)で最も多く、次いで「大手→準大手」が50社(前年比21.9%増)、「中小→中小」が44社(前年比2.3%増)とのことでした(東京商工リサーチHP「~2022年 全上場企業「監査法人異動」調査~」より引用)。2022年の監査法人異動のうち、大手から準大手・中小への異動が156社と全体の65%を占める状況になっており、確かに増えています。
IPOの監査についても同様の傾向が見受けられます。当社【IPO DB】の情報を基に、2020年以降、直近2023年7月末までの国内の新規上場会社(TOKYO PRO Marketを除く)の上場時における関与監査法人数を大手・準大手・中小の別に集計してみますと、以下の表の通りとなっています。
2020年には大手監査法人がまだ3分の2を超える割合となっていましたが、徐々に大手監査法人がそのシェアを減らす一方で、特に準大手監査法人がシェアを伸ばし、直近足元の2023年1~7月末時点での集計では、ついに大手監査法人に準大手監査法人が並んだ形となっており、IPO準備会社の監査難民の受け皿としての準大手監査法人による貢献度を改めて実感できます。
既に準大手や中小監査法人においても、大手監査法人と同様にリソースが逼迫してきていることが十分想像されますが、今回の金融庁検査の件が、監査難民問題にどの程度影響を与えることになるのか、その動向が非常に気になります。
(畠中)