【加藤】S-1方式

11月となり朝晩も肌寒くなってきました。今年は例年よりも暑い日が続いたため秋が短い気がします。

11月といえばIPOの承認ラッシュの時期です。これは日本では数が多い3月決算の会社が、予定どおりであれば申請期の1Qが固まったところで上場申請して取引所の上場審査を受け、2Qが固まったところで上場承認を受ける日程組みが多いためです。昨年は24社、一昨年も24社が承認されています(TPM、中止を除きます)。

上場承認時にはEDINET上でその会社の有価証券届出書が公表されることになりますが、今年はこの有価証券届出書の公表を上場承認時よりも前に実施可能とする新しい制度が発足しております。これは本年9月15日に改正され、同10月1日から施行されている改正開示府令・開示ガイドラインで認められるようになった方式で、米国実務にならって通称「S-1方式」と呼ばれています。

本件改正の背景等については、弊社代表鈴木のブログや日本証券業協会が公表している公開価格の設定プロセスのあり方等に関するワーキング・グループ」報告書、金融庁の金融審議会が公表している市場制度ワーキング・グループ中間整理等を参照頂きたいのですが、現在のところ、この新制度を活用した事例はまだ出ていないようです。

なお、開示ガイドラインに関しては、上述の改正に先行して、本年6月の改正で、IPOにおいて仮条件の範囲外で公開価格を決定する場合や公開価格決定と同時に売出数を変更する場合における訂正届出書の効力発生日の取扱いを明確化しており、この改正の関係で、有価証券届出書の訂正届出書の記載内容に変化が見られ始めています。

これらの制度改正は、IPO時のプライシングの適正化を目的とするものと理解していますが、承認前の有価証券届出書の提出や提出後の機関投資家とのコミュニケーション(TTWTest The Water)を実現するためには、主幹事、監査法人、弁護士事務所等との緊密な連携や相応の準備期間と相応のコストが必要となります。そのため、はじめは大型IPO案件以外まだ手が出せない方式ではないかと思われますが、今後の実務形成状況をしっかりとウォッチしていこうと思います。

 

 

加藤

2024IPO社数(予定を含む)=65*

2023IPO社数(通期)=96*

 

10月4日現在

市場別

2024

(含予定)

2023

(参考)

プライム

スタンダード

グロース

メイン-名

札幌(本則)

ネクスト-名

アンビシャス

3

9

49

1

0

3

1

2

23

66

5

1

1

0

 Qボード 2 1

合計

   68

99

 複数市場へ同時に上場する会社があるため、IPO社数と市場別内訳の合計は一致しない点にご注意ください。

 

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2023IPO社数(通期)=96*

2022IPO社数(通期)=91*

 

市場別

2023

2022

(参考)

プライム

スタンダード

グロース

メイン-名

札幌(本則)

ネクスト-名

アンビシャス

2

23

66

5

1

1

0

3※1

142

70※3

2

0

2

1

 Qボード 1 0

合計

   99

92

 複数市場へ同時に上場する会社があるため、IPO社数と市場別内訳の合計は一致しない点にご注意ください。

1:東証11社を含みます。

2:東証2部+JQ4社を含みます。

3:マザーズ10社を含みます。

2022IPO社数=91

2021年IPO社数=125社

 

市場別

2022

 

2021

(参考)

プライム

スタンダード

グロース

東証1

2

10

60

1

6

東証2

3

8

マザーズ

10

93

JASDAQ

メイン-名

1

2

16

名証2

0

3

ネクスト-名

セントレックス

2

0

1

Qボード

アンビシャス

0

1

3

合計

92

130

 複数市場へ同時に上場する会社があるため、IPO社数と市場別内訳の合計は一致しない点にご注意ください。