政策保有株式とは、「純投資目的以外の目的で保有する株式」のことをいいます。
いわゆる「持合い株式」も政策保有株式の一種です。
なお、ここでいう「純投資目的」とは、専ら株式の価値の変動又は株式に係る配当によって利益を受けることを目的とする場合を言います。(金融庁 「コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」(平成22年(2010年)3月31日) 134、124)
政策保有株式については、企業間で戦略的提携を進める場合等に意義があるとの指摘もある一方、安定株主の存在が企業経営に対する規律の緩みを生じさせているのではないかとの指摘や、保有に伴う効果が十分検証されず資本効率が低いとの指摘があり、政策保有株式に関する情報は、投資判断と対話の双方において重要であると考えられています。
(ディスクロージャーワーキング・グループ報告-資本市場における好循環の実現に向けて-)
そのため、上場会社はコーポレートガバナンス・コードの考え方や金融商品取引法の規定により、政策保有株式に関して、様々な開示が求められます。
1. コーポレートガバナンス・コードの考え方(原則 1-4)
①政策保有株式として上場株式を保有する場合には、政策保有株式の縮減に関する方針・考え方など、政策保有に関する方針を開示すべき。
②毎年、取締役会で、個別の政策保有株式について、保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、保有の適否を検証し、そうした検証の内容について開示すべき
③上場会社は、政策保有株式に係る議決権の行使について、適切な対応を確保するための具体的な基準を策定・開示し、その基準に沿った対応を行うべき
2. 有価証券報告書における開示
【コーポレート・ガバナンスの状況等】の【株式の保有状況】において、投資株式(注)について以下の開示が必要です。
(注)投資株式
財務諸表等規則 第32 条第1項第1号の投資有価証券及びこれに準ずる有価証券。
・提出会社の所有に係るもので保証差入有価証券等の別科目で計上されているものを含む
・提出会社が信託財産として保有する株式を除く。
(株式保有の方針等に関する情報開示)
①保有目的が純投資目的である投資株式と純投資目的以外の目的である投資株式の区分の基準や考え方
②保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式(上場株式に限ることができる)について、
・保有方針及び保有の合理性を検証する方法。
・個別銘柄の保有の適否に関する取締役会等における検証の内容
(純投資目的以外の目的である投資株式についての情報開示)
③保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式について
非上場株式とそれ以外の株式に区分して
(a) 銘柄数及び貸借対照表計上額の合計額
(b) 期末における株式数がその前期末における株式数から変動した銘柄について、株式数が増加した銘柄数、株式数の増加に係る取得価額の合計額及び増加の理由並びに株式数が減少した銘柄数及び株式数の減少に係る売却価額の合計額
④保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式(非上場株式を除く)等のうち主要なもの(最大60銘柄)について
(a) 銘柄
(b) 株式数
(c) 貸借対照表計上額
(d) 保有目的等
(e) 提出会社の経営方針・経営戦略等、事業の内容及びセグメント情報と関連付けた定量的な保有効果(定量的な保有効果の記載が困難な場合には、その旨及び保有の合理性を検証した方法)
(f) 株式数が増加した理由(当期末における株式数が前期末における株式数より増加した銘柄に限る。)
(g) 当該株式の発行者による提出会社の株式の保有の有無
(純投資目的である投資株式についての情報開示)
⑤保有目的が純投資目的である投資株式について、非上場株式とそれ以外の株式に区分して
(a) 提出会社の当期末及び前期末における銘柄数及び貸借対照表計上額合計額
(b) 提出会社の当期における受取配当金、売却損益及び評価損益のそれぞれの合計額
また、当期中に投資株式の保有目的を変更したものがある場合は
純投資目的から純投資目的以外の目的に変更したもの、純投資目的以外の目的から純投資目的に変更したもの、それぞれについて銘柄ごとに
・ 銘柄
・ 株式数
・ 貸借対照表計上額
関連項目:特定保有株式、みなし保有株式