先日、金融庁主催の研修で少し変わった研修講師を務めてきました。JICA(国際協力機構)も関係した、ミャンマーのヤンゴン証券取引所関係者向け研修の講師です。
ミャンマーでは証券取引所が約3年半前に出来たばかりで、まだ上場企業は5社・IPOした企業は1社だけという状況です。今後ミャンマーでのIPOを促進していくために、取引所内にIPOコンサルのような役割を担う上場推進担当者を置く構想があるとのことで、来日した取引所関係者向けに日本でのIPOコンサルタントの支援活動の内容・ポイント等の講演とQ&Aを行いました。
当日お聞きした話として、現在のミャンマーはちょうど戦後の日本のような状態にあるとのことで、これから資本市場が発展していく段階にあります。現状ではIPOすることに企業側があまりメリットを感じていないため、大変な準備が必要となるIPOを目指すことを企業に決断させること自体が難しく、大きな課題になっているとのことです。日本では企業側がIPOのメリットを強く感じているからこそ、大変な上場準備であっても乗り越えることができるので、その前提の違いはかなり大きいと感じました。
またIPO制度は世界で存在しますが、審査基準は各国様々で、日本の基準は日本独特のものです。資本市場ができたばかりのミャンマーでも審査基準がありますが、審査基準を厳しくし過ぎると上場できる企業が無くなるため、日本のような基準を求めるわけにはいきません。一方、緩めすぎると上場企業の不祥事が起きる可能性が高くなり、このバランスをどうとるかも課題になっているようです。
どのような基準が相応しいかについては正解がなく、日本でも「IPOの促進」と「投資家保護」という相反する目的のバランスを取る基準が常に検討されてきており、時代とともに変わってきています。資本市場の初期段階にあるミャンマーの話を聞いて、日本では資本市場やIPOの長い歴史の中での様々な経験(失敗)や議論を経た上で現在の審査基準が整備されているということを改めて認識しました。
当日は講演の途中から色々と質問があり、そのやり取りをしていたこともあって予定の講演時間を大きく超過したほどでした。ミャンマーの方に多少なりとも日本でのIPO支援の内容をお伝えできたと思いますが、私自身も研修資料の事前作成、当日のミャンマーの方とのQ&Aのやり取りを通じて自分の頭も整理されましたし、気付きも多い有意義な経験になりました。
P.S. 共通言語は英語のため当日は日本語⇔英語の同時通訳が付いたのですが、夜の懇親会では専門の通訳がいない状況となり、これほど英語の必要性を感じた時間はありませんでした・・。
(関口)