2021年のIPO予定企業が出揃ったため、今年のIPO業界を振り返ってみたいと思います(以下の社数には、上場承認済みの12月上場予定企業も含まれています)。
- 2021年のIPO社数は合計で125社(※)でした。2020年のIPO社数は93社だったため、前年比で32社増と大きく増加しました。年間のIPO社数が100社を超えるのは2007年以来14年ぶりのことになります。ここ数年は90社前後の年が続いていましたが、久しぶりの大台となりました。
- 公募価格ベースでの時価総額のトップはPHCホールディングスの約4,000億円でした。その他、時価総額が1,000億円を超える上場としてAppier Group、ビジョナル、セーフィー、ネットプロテクションズホールディングスがあり、大型の上場案件も多くありました。
- 上場承認後、上場日までの間に上場承認が取り消された会社が5社ありました。ただし、そのうちジィ・シィ企画とアイ・パートナーズフィナンシャルの2社はその後2021年内に上場を果たしています。
- 市場別ではマザーズが93社と圧倒的で、JASDAQスタンダードが16社、東証2部が8社、東証1部が6社となりました。また、地方市場である福証のQボードで2社のIPOがありました(重複上場は除いています)。なお、マザーズのうち2社は外国会社によるマザーズ・グローバル(外国株市場)への上場でした。
- 業種別では情報通信業が53社、サービス業が33社となっており、この2業種で全体の約7割を占めています。
- 主幹事証券はみずほ証券が28社で首位。以下、野村證券27社、SMBC日興証券26社、SBI証券18社、大和証券14社と続きました(社数は東証公表資料の「幹事取引参加者」の記載ベースで、複数の証券会社の記載がある場合は全て加算しています)。
- 監査法人は新日本が33社で首位。次いであずさとトーマツがそれぞれ19社、太陽17社となっています。京都8社、仰星7社、東陽6社と、中堅監査法人の社数も以前より増加してきています。
- 印刷会社についてはプロネクサスが66社、宝印刷が59社となりました。
- 証券代行機関については三井住友信託が53社で首位、次いで三菱UFJ信託が50社、みずほ信託が17社となっています。
※TOKYO PRO Marketへ新規上場した13社を合わせると138社になります。当記事ではTOKYO PRO Marketへの上場は社数から除いています。
今年9月には日本証券業協会に「公開価格の設定プロセスのあり方等に関するワーキング・グループ」が設置され、IPOの公開価格の決定プロセスのあり方等について現在も検討が行われています。また、来年4月には東証の市場再編が予定されており、「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」の3区分への再編が行われます。色々と変化していく要素もありますが、来年も引き続きIPO市場が活況となることを期待したいです。
(関口)