流通株式とは、上場会社が発行する株式のうち、東京証券取引所の規則上、流動性が高いとみなされる株式のことをいいます。(正式な定義については後述します)
上場会社の株式は取引所で活発に売買が行われ、健全な株価形成が行われることが重要であるため、東京証券取引所では、上場時の株式の流動性に関して「株主数」「流通株式」「時価総額」等について形式要件(形式基準)を定めています。
このうち流通株式については「流通株式数」「流通株式時価総額」「流通株式数(比率)」の基準が定められています。
(流通株式の定義)
流通株式とは、申請会社が発行する株式から流通性の乏しい株式を除いた株式をいいます。(有価証券上場規程 第2条(96)、有価証券上場規程施行規則 第8条)
流通性の乏しい株式とは、以下の者が所有する株式をいいます。
(1)申請会社(自己株式)
(2)申請会社の役員(注1)
(3)申請会社の役員の配偶者及び二親等内の血族
(4)申請会社の役員または上記(3)により総株主の議決権の過半数が保有されている会社等
(5)申請会社の関係会社及びその役員
(6)国内の普通銀行、保険会社、事業法人等(注2)(注3)(注4)
(7)有価証券の数の10%以上を所有する者または組合等(従業員持株会を含み、投資信託等に組み入れられている株式等を除く)
(注1)役員
役員持株会を含み、取締役、会計参与(会計参与が法人であるときはその職務を行うべき社員を含む)、監査役、執行役(理事及び監事その他これらに準ずるものを含む)
(注2)普通銀行
都市銀行や地方銀行を指し、信託銀行(信託口を含む)、信用金庫、信用組合、労働金庫、農林系金融機関、政府系金融機関、証券金融会社等は含みません。
(注3)保険会社
保険業法(平成7年法律第105号)第2条第3項に規定する生命保険会社及び同条第4項に規定する損害保険会社をいいます。
(注4)事業法人等
金融機関及び金融商品取引業者以外のすべての法人を指し、株式会社だけでなく、例えば、財団法人・学校法人等の法人も含みます(投資事業有限責任組合等の法人格のない団体は、事業法人等には含まれません。)。
(流通株式に係る形式基準)
●流通株式数
流通株式の数をいいます。
●流通株式時価総額
流通株式時価総額は、流通株式数に株価を乗じて算定します。
申請会社が非上場で、上場時に公募または売出しを行う場合の株価には発行価格決定日に決定された価格を使用します。
●流通株式比率
上場株式数に対する流通株式数の比率をいいます。
(非上場会社の株式の流動性に関する基準の充足)
株式の流動性に関する基準は「上場の時までに(または上場日に)充足する見込みであること」が必要です。
そのため、上場申請時点で株式の流動性の低い非上場会社は、株式の流動性に関する基準を充足する目的で上場時に公募または売出しを行います。
(市場ごとの流通株式の基準)
東京証券取引所は、市場ごとに株式の流動性に関する基準を定めています。
東京証券取引所の市場ごとの流通株式に関する基準の内容は以下のとおりです。
市場 |
スタンダード |
プライム |
グロース |
流通株式数 (上場時見込み) |
2,000単位以上 |
2万単位以上 |
1,000単位以上 |
流通株式時価総額 (上場時見込み) |
10億円以上 |
100億円以上 |
5億円以上 |
流通株式数(比率) (上場時見込み) |
25%以上 |
35%以上 |
25%以上 |
(参考) 新規上場申請に係る公募又は売出しの基準 |
- |
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500単位以上の公募を実施 |
(流通株式比率:大規模な公募又は売出しを伴う新規上場に係る特例)
新規上場時における株式の公募又は売出しの規模が 1,000 億円以上の見込みである場合、流通株式比率については上場時までに 10%以上の見込みとなることで足ります。
ただし、この特例を適用するためには、上場後5年以内に流通株式比率に関する基準に適合するための具体的な計画等を記載した「流通株式比率に係る基準に適合するための計画書」を提出、上場後は、計画の進捗状況(計画に重要な変更がある場合には変更内容を含む)を、1事業年度に対して1回以上の頻度で開示する必要があります。
関連項目:形式基準と実質基準、有価証券届出書、東証各市場の形式要件比較表