第三者割当増資とは、会社が特定の第三者に株式を割り当てることにより行う資金調達の方法をいいます。
増資による資金調達方法としては他に、既存の株主に持株数(持株比率)に応じて株式を割り当てる株主割当増資がありますが、第三者割当増資は、割当先が既存の株主であるとは限らない点で株主割当増資と異なります。
また、株主構成を是正する方法としては、既存の株主から他者への株式の移動(株移動)がありますが、第三者割当増資は、会社が資金調達を行えるという点で株移動と異なります。
第三者割当増資は、上場前の資本政策においては、①会社が資金調達を行い、かつ②株主構成の変更(是正)を行う方法として利用されます。
(第三者割当増資の基本的な手続き)
非公開会社が第三者割当増資を行う場合には、募集事項を原則として株主総会によって決定しなければなりません(会社法199条第1項、第2項)が、株主総会は募集事項の決定を取締役会に委任することができます。この場合、株主総会では募集株式の上限及び払込金額の下限を定めなければなりません。(会社法200条 第1項)
(第三者割当増資の実施状況の開示及び継続保有の確約)
申請会社が上場申請日の直前事業年度の末日の2年前の日から上場日の前日までの期間において第三者割当増資を実施している場合は、割当の状況及び価格の算定根拠を「Iの部」に記載しなければなりません(グリーンシート銘柄を除く)
また、申請会社が上場申請日の直前事業年度の末日の1年前の日以後において第三者割当増資を行っている場合には、申請会社と割当を受けた者は、割当を受けた株式を一定期間継続的に保有すること等を書面により確約しなければなりません。
(有価証券届出書の提出)
会社が50名以上の者を相手方として、新たに発行する株式の取得の申込みの勧誘を実施する場合で、発行価額の総額が1億円以上となる場合には、予め有価証券届出書を財務局に提出しなければ第三者割当増資を実施することができません。
有価証券届出書の作成には膨大な作業が必要な上、有価証券届出書を提出した会社は原則として、事業年度ごとに有価証券報告書を提出しなければなりません。
このような会社の事務負担を避けるためには、第三者割当増資を計画する際に有価証券届出書の提出要件に該当しないように注意する必要があります。