理化学研究所は1月29日に「マウスの体細胞に化学的・物理的な刺激を与えることで、万能細胞(身体を構成するすべての種類の細胞に分化する能力を有する未分化細胞)を作製することに成功した」と発表しました。
新たに作り出された細胞は「STAP細胞」と名付けられ、山中伸弥教授のノーベル賞受賞で注目されたiPS細胞より短期間で効率よく作製できるとされています。
STAP細胞に関しては「ヒト細胞への適用の可能性」、「細胞の初期化メカニズムの解明」等の課題はあるようですが、その研究成果は生物学の常識を覆す内容とのことです。
「科学誌ネイチャーに論文を投稿したが、掲載は却下され、審査した研究者からは『細胞生物学の歴史を愚弄している』という趣旨のメールも届いた」というエピソードからは、STAP細胞の作製がどれだけ革新的だったかがうかがわれます。
革新的な成果が生まれた一因として、研究チームの中心人物の小保方晴子さんが、「化学系の出身で、生物学の先入観がなく、データを信じて独自の考えをもっていた」ことが挙げられています。
逆に言えば「知識・経験ともに小保方さんに優っているはずの生物学の世界の重鎮でさえも、先入観に邪魔されて事実が見えなかった(可能性がある)」ということです。
先入観や固定観念が厄介なのは、経験豊富で周囲への影響力の大きい人ほどとらわれやすく、結果として改革や改善を著しく阻害してしまう点だと思います。
上場準備においても似たようなことは起こります。
上場準備の段階では、しばしば、事業や組織、業務の抜本的な見直しが試みられますが、業務や社内事情に精通したキーパーソンが先入観にとらわれてしまうと、「現状維持」に近い結論しか出せず、せっかくの改革・改善の機会が失われてしまいます。
会社にとって上場準備作業は「先入観を持たず、改革を生み出し続ける組織を構築する」絶好の機会であるのに、これは非常にもったいないことです。
ただ、先入観を持たずに自社を観察、評価、決断することは決して容易なことではありません。
これを支援するのは、独立の視点を持つIPOコンサルタントの重要な役割ではないかと思います。
(原田)