新年度が始まり、今年は4月から消費税が8%になるという大きな変化が生じた年になりました。
増税自体は生活にとってマイナスなのでしょうが、その影響も考慮され、今年は大企業を中心に久しぶりにベアを実施する企業が多く見られました。また、ベアの実施だけでなく、小売や飲食の大手企業がパートやアルバイトといった非正規社員を大量に正社員化することを決定したり、若手を中心に基本給の引き上げや諸手当を支給する企業が相次ぐなど、従業員に対する待遇が改善されている事例が目に付きます。
実際、労働市場では五輪特需などに湧く建設業界で人材争奪戦が起きていたり、ある飲食店チェーンは従業員不足によって一時休業を余儀なくされたとの噂もあるほどです(真偽は不明ですが)。
これらの話は、少し前までと打って変わって、労働市場や企業の従業員に対するスタンスが大きく変化していることを感じさせます。
今から5年程前、私は証券取引所で企業の新規上場を推進する仕事をしていたのですが、当時はリーマン・ショック後で、お会いした未上場企業の経営者の方が「不景気で仕事を探している人が世の中にたくさん溢れているから、わざわざIPOなどしなくても従業員はいつでも採用できる」と仰っていたことがとても印象に残っています。
それが今や、大手企業を中心に人材の争奪戦が生じ始めているわけですが、いざ争奪線になると規模や知名度、信用度に劣るベンチャー企業や中小企業はどうしても不利な立場になりがちです。実際、私の支援先の上場準備会社でもここ最近、人材の採用が難しくなってきているとのお話を聞きます。
経営に必要な資源として「ヒト、モノ、カネ、情報」という言葉が良く使われますが、この中で一番最初に登場する「ヒト」がそれ以外の経営資源をコントロールすることを考えると、まず「ヒト」がいないと何も始まりません。そういう意味では特に大事な「ヒト」をいかに確保するのかはどの企業でも重要な経営課題ですし、IPOを目指すような成長中・業容拡大中の企業にとっては尚更重要です。
もともとIPOにはその代表的なメリットとして「資金調達」や「優秀な人材の獲得」が挙げられることが多いですが、好調な市況下で資金調達がしやすいことに加え、人材獲得の必要性も増してきている環境下では、IPOを目指すことの価値が以前に比べてますます増加してきているように思います。
IPOを成し遂げることで資金も人材も確保し、それを元手に更なる成長に繋げるという理想的な流れに乗り、大きく成長していく企業が増加していくことを願っています。
(関口)