【加藤】新・IPO時の監査報告書

 3月決算会社の管理の皆さまや監査人の皆さまにとっては、決算短信が完成し、ひと段落といったところでしょうか。次の招集通知、有報等の対応も頑張ってください。

さて、以前IPO時の監査報告書というテーマでブログを記載しておりますが、最近のIPOに関する制度改正を踏まえ、アップデートが必要と感じておりました。また、前回ブログ(四半期パズル)以降、法整備も進みましたので、現状に即して改めて説明してみたいと思います。

前提として、本ブログで触れるIPO時の監査報告は、「日本基準」の「連結あり」の決算に対する有価証券上場規程に基づく(いわゆる準金商法)監査・レビューと金融商品取引法が求める監査・レビューのみとし、会社法に基づく監査報告は対象外とします。また、本内容は私見である旨ご了承願います。

 

では、質問です。

IPOを実現する企業が、最初に監査報告書を監査人から受領するのはどのタイミングでしょうか?

(ア)   直前前期の決算が総会で承認された時点

(イ)   直前期の決算が総会で承認された時点

(ウ) 上場申請直前

(エ)   上場申請から3週間以降

(オ)   上場承認直前

 

答えは、(エ)又は(オ)となります。

 

以前は(ウ)が正解だったのですが、202310月1日より、新規上場申請会社が上場承認時に提出している有価証券届出書を上場承認前に提出することが可能となり(以下、このブログではS-1方式といい、それ以外を通常方式といいます)、このS-1方式の出現に合わせて、上場申請時の監査報告書の提出は不要となりました。

そのため、通常方式の場合は、(オ)の上場承認の直前(具体的には目論見書校了直前)にIPO時の監査報告書が監査人により発行されることとなります。また、S-1方式の場合は、(エ)の上場申請から3週間以降で承認前有価証券届出書の提出直前のタイミングで発行されることとなります(これは、承認前有価証券届出書には証券コードが必要となりますが、当該コードは上場申請後3週間後から発行可能となるためです(新規上場ガイドブック【承認前届出書に関するQ&A】Q5ご参照))。

 

では、この際、監査証明は何種類受領することになるでしょうか?

 

以前は以下のようにシンプル(?)でした。

     金商法監査としての上場申請時Ⅰの部の直前連結財務諸表に対する監査報告書

     金商法監査としての上場申請時Ⅰの部の直前期連結財務諸表に対する監査報告書

     金商法監査としての上場申請時Ⅰの部の直前単体財務諸表に対する監査報告書

     金商法監査としての上場申請時Ⅰの部の直前期単体財務諸表に対する監査報告書

     金商法監査としての上場申請時四半報の四半期連結財務諸表に対するレビュー報告書

     金商法監査としての上場承認時公表用Ⅰの部直前期の連結財務諸表に対する監査報告書

     金商法監査としての上場承認時公表用Ⅰの部の直前期連結財務諸表に対する監査報告書

     金商法監査としての上場承認時公表用Ⅰの部の申請期四半期連結財務諸表に対するレビュー報告書

     金商法監査としての上場承認時公表用Ⅰの部の直前単体財務諸表に対する監査報告書

     金商法監査としての上場承認時公表用Ⅰの部の直前期の単体財務諸表に対する監査報告書

     金商法監査としての上場承認時公表用四半報四半期連結財務諸表に対するレビュー報告書

     金商法監査としての有価証券届出書の直前期の連結財務諸表に対する監査報告書

     金商法監査としての有価証券届出書の直前期の連結財務諸表に対する監査報告書

     金商法監査としての有価証券届出書の申請期の四半期連結財務諸表に対するレビュー報告書

     金商法監査としての有価証券届出書の直前期の単体財務諸表に対する監査報告書

     金商法監査としての有価証券届出書の直前期の単体財務諸表に対する監査報告書

 

ところが現状では、上述のとおり申請時の監査・レビュー報告の提出が不要となった関係で①~⑤の東証への提出は不要となり、また、202441日から施行される改正金商法により、これまでの四半報が廃止(四半期決算短信へ一本化)され、半期報告書に変わっていく関係で、上記⑧と⑪と⑭が中間連結財務諸表に対する期中レビュー報告書(レ基報1号)に変更となります。

 

その上で更に、四半報の廃止に伴い、公表用Ⅰの部、有価証券届出書ではそれぞれ任意で四半期情報(四半期決算短信(開示府令等では「金融商品取引所の定める規則により四半期に係る財務情報」と表現されています))を開示することが可能となりました。この四半期財務情報に対し、監査人による期中レビューを受けている場合には、その旨を開示するとともに、当該期中レビュー報告書(レ基報2号)が提出されることとなります。なお、以前は、有価証券届出書に直近四半期累計期間の四半期財務諸表に対する四半期レビュー報告書がEDINETの「監査報告書」のタブに掲載されていましたが、今般、四半期情報が中間財務諸表(2Q)と任意の四半期短信(1Q、3Q)に分かれたことにより、中間財務諸表に対する期中レビュー報告書(レ基報1号)はEDINETの「監査報告書」のタブに掲載されますが、任意の四半期情報(四半期決算短信ベース)に対する期中レビュー報告書(レ基報2号)は「監査報告書」のタブではなく、「代替書面・添付文書」に掲載されるようです(「令和5年金融商品取引法等改正に係る政令・内閣府令案に対する パブリックコメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方No.23ご参照)。

 

と、ここまで、通常方式の監査報告について記載してきましたが、S-1方式では、さらに追加の対応が必要となります。具体的には、S-1方式では上場承認前に有価証券届出書がEDINETに開示され、これに対応する監査報告は上記⑫~⑯(任意の期中レビュー報告を含みます)のとおりです。しかし、S-1方式では、上場承認時には、その時点の決算書を掲載した訂正届出書の提出が必要となり、決算書にも、再度上記⑫~⑯(任意の期中レビュー報告を含みます)に相当する監査報告が発行されることとなります(企業内容等開示ガイドライン7-2-2ご参照)。

 

以上を整理しますと、現状では以下の理解です(いずれも現時点では今後の実務となります)。

【通常方式】

     金商法監査としての上場承認時公表用Ⅰの部直前期の連結財務諸表に対する監査報告書

     金商法監査としての上場承認時公表用Ⅰの部の直前期連結財務諸表に対する監査報告書

     (経過していれば)金商法監査としての上場承認時公表用Ⅰの部の申請期中間連結財務諸表に対する期中レビュー報告書(レ基報1号

     (任意)金商法監査としての上場承認時公表用Ⅰの部の申請期四半期連結財務諸表に対する期中レビュー報告書(レ基報2号

     金商法監査としての上場承認時公表用Ⅰの部の直前単体財務諸表に対する監査報告書

     金商法監査としての上場承認時公表用Ⅰの部の直前期の単体財務諸表に対する監査報告書

     金商法監査としての上場承認時公表用半期報告書中間連結財務諸表に対する期中レビュー報告書(レ基報1号

     金商法監査としての有価証券届出書の直前期の連結財務諸表に対する監査報告書

     金商法監査としての有価証券届出書の直前期の連結財務諸表に対する監査報告書

     (経過していれば)金商法監査としての有価証券届出書の申請期中間連結財務諸表に対する期中レビュー報告書(レ基報1号

     (任意)金商法監査としての有価証券届出書の申請期四半期連結財務諸表に対する期中レビュー報告書(レ基報2号

     金商法監査としての有価証券届出書の直前期の単体財務諸表に対する監査報告書

     金商法監査としての有価証券届出書の直前期の単体財務諸表に対する監査報告書

 

S-1方式】

     金商法監査としての有価証券届出書の直前期の連結財務諸表に対する監査報告書

     金商法監査としての有価証券届出書の直前期の連結財務諸表に対する監査報告書

     (経過していれば)金商法監査としての有価証券届出書の申請期中間連結財務諸表に対する期中レビュー報告書(レ基報1号

     (任意)金商法監査としての有価証券届出書の申請期四半期連結財務諸表に対する期中レビュー報告書(レ基報2号

     金商法監査としての有価証券届出書の直前期の単体財務諸表に対する監査報告書

     金商法監査としての有価証券届出書の直前期の単体財務諸表に対する監査報告書

     金商法監査としての上場承認時公表用Ⅰの部直前期の連結財務諸表に対する監査報告書

     金商法監査としての上場承認時公表用Ⅰの部の直前期連結財務諸表に対する監査報告書

     (経過していれば)金商法監査としての上場承認時公表用Ⅰの部の申請期中間連結財務諸表に対する期中レビュー報告書(レ基報1号

     (任意)金商法監査としての上場承認時公表用Ⅰの部の申請期四半期連結財務諸表に対する期中レビュー報告書(レ基報2号

     金商法監査としての上場承認時公表用Ⅰの部の直前単体財務諸表に対する監査報告書

     金商法監査としての上場承認時公表用Ⅰの部の直前期の単体財務諸表に対する監査報告書

     (経過していれば)金商法監査としての上場承認時公表用半期報告書中間連結財務諸表に対するレビュー報告書

     金商法監査としての上場承認時訂正届出書の直前期の連結財務諸表に対する監査報告書

     金商法監査としての上場承認時訂正届出書の直前期の連結財務諸表に対する監査報告書

     (経過していれば)金商法監査としての上場承認時訂正届出書の申請期中間連結財務諸表に対する期中レビュー報告書(レ基報1号

     (任意)金商法監査としての上場承認時訂正届出書の申請期四半期連結財務諸表に対する期中レビュー報告書(レ基報2号

     金商法監査としての上場承認時訂正届出書の直前期の単体財務諸表に対する監査報告書

     金商法監査としての上場承認時訂正届出書の直前期の単体財務諸表に対する監査報告書

 

いかがでしょうか。

今回はIPO時の監査報告という切り口で説明しましたが、当ブログを読まれた方の中には、

・Ⅰの部と届出書の違いってなんだ?

・なんでIPOは2期分の監査証明が必要なんだ?比較情報は?

・そもそもS-1方式って何?

KAMはどうなんだ?

など、様々な疑問が生じた方も多いのではないでしょうか。それらの疑問には下記コンテンツも併せてご覧頂ければと思います。

の部とか目論見書とか届出書とかⅠの部

IPO時の比較情報の取扱い

S-1方式S-1方式(承認前届出書提出方式)

IPOにおけるKAM事例(2022年)KAM

 

従前と異なり、日本のディスクロージャー制度の深化に併せて、IPO時の開示実務・監査報告実務も多様化しています。この動きに合わせ、東証ASBJ会計士協会ではそれぞれ特設サイトを設けて連携しています。

IPO準備中の経営者、監査役等、実務担当者は、これらの情報を確認しつつ、主幹事証券、監査法人とより一層緊密な連携を図って対処頂ければと思います。もちろん弊社もしっかりと後方支援してまいります。

 

加藤

 

 

2024IPO社数(予定を含む)=36*

2023IPO社数(通期)=96*

 

5月17日現在

市場別

2024

(含予定)

2023

(参考)

プライム

スタンダード

グロース

メイン-名

札幌(本則)

ネクスト-名

アンビシャス

0

4

32

0

0

1

0

2

23

66

5

1

1

0

 Qボード 0 1

合計

   37

99

 複数市場へ同時に上場する会社があるため、IPO社数と市場別内訳の合計は一致しない点にご注意ください。

 

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2023IPO社数(通期)=96*

2022IPO社数(通期)=91*

 

市場別

2023

2022

(参考)

プライム

スタンダード

グロース

メイン-名

札幌(本則)

ネクスト-名

アンビシャス

2

23

66

5

1

1

0

3※1

142

70※3

2

0

2

1

 Qボード 1 0

合計

   99

92

 複数市場へ同時に上場する会社があるため、IPO社数と市場別内訳の合計は一致しない点にご注意ください。

1:東証11社を含みます。

2:東証2部+JQ4社を含みます。

3:マザーズ10社を含みます。

2022IPO社数=91

2021年IPO社数=125社

 

市場別

2022

 

2021

(参考)

プライム

スタンダード

グロース

東証1

2

10

60

1

6

東証2

3

8

マザーズ

10

93

JASDAQ

メイン-名

1

2

16

名証2

0

3

ネクスト-名

セントレックス

2

0

1

Qボード

アンビシャス

0

3

合計

92

130

 複数市場へ同時に上場する会社があるため、IPO社数と市場別内訳の合計は一致しない点にご注意ください。