【関口】「過去」から「未来」へ

 6月25日に、金融庁から開示府令の改正案が発表されました。

 現状ではIPO時に提出が必要となる「有価証券届出書」や「Ⅰの部」には過去5事業年度分の財務諸表の記載が必要となっていますが、今回の改正案により、このうち「特別情報」と呼ばれる3期前~5期前の期間の財務諸表(及びその注記)の記載が不要となります。かねてから金融審議会の「新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループ」で検討が進められていた改正案ですが、ようやく実現する見込みとなりました(8月下旬に公布・施行の予定となっています)。

 

 特別情報期間の財務諸表については、制度上、監査法人等による監査証明は不要となっていますが、実務においてはその記載内容が会社の作成資料と一致しているかを(監査としてではなく)調査する業務が存在し、私は会計士として何度かこのお仕事をさせていただく機会がありました。調査対象期間はかなり昔になりますが、急成長中の企業が多いこともあり、会社に訪問しても過去の資料がほとんど残っていなかったり、質問しても当時の会社の状況に詳しい役員・社員の方が現在の会社に全くいなかったりと、調査業務が難航して時間がかかることが何度もありました。

 上場準備会社の立場から見ると、特別情報の作成業務自体に時間がかかることは勿論のこと、上場承認直前の取引所の上場審査対応などで非常に忙しい時期にこの調査対応も同時に行わなければならないことなどを考えると、特別情報に関する業務負荷は想像以上のものになっていますので、この改正は間違いなく上場準備会社にとってプラスだと思います。

 

 ただし、上場準備会社の方には今回の改正を「上場準備作業が楽になった」と捉えるのではなく、「上場準備作業で力を入れる場所が変わった」と考えていただければと思っています。

 会社の状況がどんどん変わっていくIPOするような成長中の企業にとって、遠い過去の情報である特別情報は相対的に重要性が低いことから今回の廃止が決まったと思われますが、逆に言うと、市場に新しく登場するIPO企業にとっては上場時に自社の特徴や上場後の将来の計画を市場にアピールすることは普通の企業以上に重要なことになります。

 それを踏まえ、特別情報の作成が不要となったことで生じた時間を、例えば有価証券届出書やⅠの部の「事業の内容」の記載内容の検討時間に充てることで、どのような記載をすれば自社の特徴や強みを投資家により理解してもらえるかを考えることが出来ます。

 また、中期経営計画や事業計画の策定に従来以上に時間をかけ、自社を取り巻く環境の分析や戦略・戦術のブラッシュアップを行うとともに、自社の成長戦略やエクイティストーリーを公表資料でどのように表現すれば投資家から高く評価されるかなども検討することができます。

 

 是非、今後は「過去の検証」ではなく「未来の創造」に上場準備の多くの時間を使っていただき、上場時に市場から高く評価されるIPO企業を目指していただければと思います。

 

関口

 

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