3月31日付で東証の「Ⅱの部 記載要領」「マザーズ各種説明資料 記載要領」が改訂になっています。今回の改訂の内容としては、上場準備会社が上場審査のために東証に提出するⅡの部・各種説明資料やそれらの添付資料に関して、これまで書面での提出が原則だったものが、今後は電子データでの提出が原則となるというものです。
これは言葉で表すと一言だけの変更ですが、実務上はそれなりに影響がある話です。
上場準備会社は上場審査のために相当な量の社内資料を用意し、提出する必要があります。Ⅱの部・各種説明資料やそれらの添付資料だけに限っても、1セット用意するだけでも数多くのキングファイルが必要となる量ですが、実際には東証向けだけでなく主幹事証券公開引受部用、主幹事証券審査部用、会社控え用など複数セットを用意する必要があるため、会社の担当者の方にとっては印刷作業とファイリング作業にかなりの時間がかかる大変な作業になっているケースが多いです。特にIT企業などでは日常の議事録や調書等の大半を紙ではなくデータだけで保管・管理している会社もあり、そのような会社では「審査のためだけに」大量の印刷作業をする必要がありました。データでの提出となるとこれらの作業が不要となるので、上場準備会社の実務担当者の方にとっては負荷が軽くなる良い変更だと思います。
今回の記載要領の変更は、上場審査が紙では無くデータを対象に行われるということで(勿論、必要に応じて審査部側で紙に打ち出すのでしょうが)、企業活動が全体的に電子化(ペーパーレス化)してきている時代の変化に対応したものだと思います。実際、私も仕事において紙に資料を打ち出すことはかなり以前から減少してきているので、もう少し早く変更になっていても良いくらいだったとは思いますが、それでも良い変更だと思います。
時代の変化と言う意味では、昨今ではRPAやAIといったロボットや人工知能の技術発展が急速なスピードで進んでいますし、実際にこれらの活用を事業上の強みにして上場を果たすIPO企業も増えてきています。変化に応じて上場審査が変わっていくことを考えると、将来は上場審査においてもAIやロボットが活用され、人間が気づかなかった不備をAIが指摘する、などといったことも現実になるのかもしれませんね。
(関口)