【鈴木】上場延期案件増大の背景

この数年、東証に上場申請をしてから審査が中止や延期になっている会社が多くなっています。一昔前には無かった現象です。何故このような状況になっているかを考えてみたいと思います。主な要因は次の4つだと思います。

① 過去と現在のマザーズの審査のレベルの大きな差

② 社会現象の審査への反映と経営のへの反映へのタイムラグと意識の希薄さ

③ 規模の小さい会社の業績に与える影響

④ 内部通報の状況

 

① 過去と現在のマザーズの審査のレベルの大きな差

過去と現在のマザーズ市場の上場審査では大きな差があります。当時マザーズ市場の開設は、新興企業育成市場として高い成長可能性を秘めた企業に資金調達の場を与え、また、不特定多数の投資家に投資機会を与え、皆で日本経済を盛り上げることを目的としていました。それは投資家にリスク市場としてのアナウンスを行い、かつ、十分な開示を行うことで対処すると言うものでした。規模が小さくても成長期待の出来る会社に上場を促すためもあり、管理体制が多少不脆弱でも開示を前提に審査を受け入れていました。当初のマザーズへの上場審査は、Ⅰの部(目論見書の元)の中の「事業等のリスク」の記載内容の検討が中心であり、書面による質問書及び回答書の提出などは無く、それらに基づくヒアリングはありませんでした。このような審査の時にマザーズに上場した社長は上場の審査は思ったほど難しくないと思ったことでしょう。一方、他の未上場の会社の社長は、あの会社も上場出来たなら当社も上場出来るのではないかと考えたとか?また、上場を実現した社長が、未上場企業の社長に審査は思ったほどではないとアドバイスしたとか?しかし、現在は書面により相当多くの質問が出され、短期間に書面による回答と面談により説明を要するなど様変わりしています。証券会社も指導が難しいところですね。昨年のブログでも書きましたが、JPX 自主規制法人(IPO審査の主体)が年次報告2019で証券会社に「公開指導及び引受審査の徹底を要請」していることからも諸事情の一環が読み取れます。

 

② 社会現象の審査への反映と経営への反映のタイムラグと意識の希薄さ

上場審査は社会現象を強く反映するもので、反社会的勢力、労働問題や子会社の不正防止の為の強化、その他各業界特有の法令遵守が求められるようになりました。ベンチャー企業はコンプライアンス等の意識が希薄な会社が多いこともあり、経営実態に反映するにもタイムラグもあり整っていない場合が多く、上場審査で問われる可能性が高いと言う意識も足りないでしょう。これらは直ぐに体制整備出来るものでは無く審査合格レベルに達していないと言うことだと思われます。

 

③ 規模の小さい会社の業績に与える影響

上場審査ではgumiショック以降、業績予想を慎重に検討するようになっており、実績を見ながら利益計画の根拠の妥当性を勘案し実現可能性を探ります。毎年1月の上場は正月の休みの関係から上場日程上実務的に無理があります。3月決算が多いことから、切りの良い年内の12月上場か決算期を超えない3月までの上場を目指す傾向が強くなっています。この業績については、証券会社も読みにくいものであり、順調に推移することを期待して12月上場のスケジュールを組み、良ければ上場、思わしくない場合は業績動向をもう少し見ながら3月上場に期待をかける傾向があると思われます。このような状況の中、最近のIPO希望会社は過去に比べ規模が小さくなっている為、少しの下方へのブレでも業績に与える影響が大きく、審査的には様子見(延期)と判断されることが多くなります。

 

④ 内部通報の状況

最近は内部通報が申請前後に届くことが多くなっていることも影響しています。内部通報の内容は様々です。大抵の場合事実関係を調べて問題が無いことを証明することが必要になります。東証への申請時には既に大まかな上場日までのスケジュールを決めており、このタイミングでは調査の為の時間が無く延期する原因になります。

 

以上、主な要因を4つ挙げました。

これらは未上場企業が上場会社になるために整備しておくべき基本的なことだと思いますが、対応が出来ていない会社がなんと多いことか。実際に審査が延期(中止)になって初めて重要性に気付く会社が多いのです。各企業が上場のタイミングを企業成長の為の中期経営計画上でも重要なポイントにしているとすれば、これらの整備を十分に行っていないことは明らかに戦略ミスと言えるでしょう。まあ、上場してから問題を起こすよりもダメージは少ないですが。

上場(準備)は十分慎重に対応すべき重要な戦略であることをお忘れなく。

 

鈴木

 

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