2020年のIPO予定企業が出揃ったため、今年のIPO業界を振り返ってみたいと思います(以下の社数には、上場承認済みの12月上場予定企業も含まれています)。
- 2020年のIPO社数は合計で93社(※)でした。2019年のIPO社数は86社だったため、前年比で7社増加しました。新型コロナウイルスの影響でIPO市場も大きな悪影響を受けることも想像されましたが、結果としては前年を上回るIPO社数となり、活況な1年となりました。
- 新型コロナウイルスがマーケットや業績に影響を与えたため、3月~4月に上場を予定していた18社が上場を取りやめました。一方、18社のうち10社はその後、2020年内にIPOを果たしています。また、8月に上場承認された大型案件のキオクシアも、同社からの申し出により上場承認が取り消されています。
- 18社のうちの1社であるSpeeeは、3月の上場承認時はマザーズへの上場予定でしたが、7月の上場はJASDAQスタンダードへの上場で、短期間に上場市場が変わった珍しいケースでした。
- 市場別ではマザーズが63社と圧倒的で、東証1部・2部が15社、JASDAQスタンダードが14社となりました。また、地方市場である名証セントレックスで1社のIPOがありました(重複上場は除いています)。
- 主幹事証券は野村證券が22社で首位となっており、以下、みずほ証券21社、SMBC日興証券15社、SBI証券14社、大和証券13社と続きました(社数は東証公表資料の「幹事取引参加者」の記載ベースで、複数の証券会社の記載がある場合は全て加算しています)。
- 監査法人は新日本が27社で首位。次いであずさ22社、太陽11社、トーマツ10社となっています。新日本、あずさ、トーマツの3法人が1位~3位を占めることが毎年続いていましたが、今年は太陽が3位となっており、これまでと傾向が変わっています。また上記以外の監査法人として13法人の名前があり、監査法人の裾野が広がっています。
- 印刷会社についてはプロネクサスが49社、宝印刷が44社となりました。
- 証券代行機関については三菱UFJ信託が42社で首位、次いで三井住友信託が32社、みずほ信託が17社となっています。
※TOKYO PRO Marketへ新規上場した10社を合わせると103社になります。当記事では、TOKYO PRO Marketへ
の上場は社数から除いています。
新型コロナウイルス対策として新規上場日の東証の上場セレモニーも中止されていましたが、11月から参加者の人数制限はあるものの再開され、正常化へ向けた動きが出ています。資金調達の環境としては、VCの活動は4月~6月は停滞したものの7月以降はほぼ通常の状況に戻っているとのことで、新規の投資資金も入っていると聞いています。足元で新たに上場準備を開始する企業数も高水準のため、(新型コロナウイルスの今後の状況にもよりますが)来年以降のIPO市場も堅調になることを期待したいです。
(関口)