東証の市場再編によって、2022年4月からはプライム・スタンダード・グロースの3市場区分となることが公表されています。
そして、グロース市場においては「事業計画及び成長可能性に関する事項」の開示が求められることになりました。こちらは新規上場日の開示が求められるほか、上場後も少なくとも1事業年度に対して1回以上の開示が求められることになります。(実際の記載内容が定められた「事業計画及び成長可能性に関する事項の開示 作成上の留意事項」はこちらを参照ください)
もともとマザーズへ上場する会社は新規上場日に「成長可能性に関する説明資料」の開示が求められていましたが、同資料は東証の新規上場ガイドブックの中で、記載事項の例示として
・中期経営計画の概要及びその根拠等
・市場規模の予測、業界環境及びそれらを踏まえた成長戦略
が記載されているだけでした。
それと比較すると、今回の「作成上の留意事項」では「ビジネスモデル、市場環境、競争力の源泉、事業計画、リスク情報」という項目が明記され、かつそれぞれについて「記載のポイント」が細かく記載されており、開示が求められる内容が増加しています。
実際の市場再編はまだ先のためグロース市場が誕生するのは1年以上先の話ですが、上記の変更については既に一部の運用が始まっており、マザーズに新規上場する会社については2020年11月以降に東証に上場申請する会社から「事業計画及び成長可能性に関する事項」を新規上場日に開示することが必要になっています。
2020年11月に上場申請した会社が実際に上場するのは早くて2021年2月になるため、2月のIPO企業の上場日の適時開示情報をTDnetで確認していました。私が見ていた限りでは、2月19日に上場した(株)WACULが「事業計画及び成長可能性に関する事項」を開示した最初の事例になると思います。
同社の上場日の開示資料(一部訂正後)を見てみると、申請期(21年2月期)だけでなく申請翌期(22年2月期)の計画が記載されています。具体的には、売上高・売上総利益率・営業利益・従業員1人あたり売上高、1社あたり理論LTV・1社あたり契約獲得広告宣伝費、主な投資関連指標(広告宣伝費、委託/報酬/顧問料、社員数)といった経営指標(KPI)の数値計画が申請期と申請翌期について記載されています。また、事業のリスク(リスクごとの発生可能性と影響度を含む)と各リスクへの対応方針も記載されており、「事業計画(経営指標、利益計画及び前提条件)」、「リスク情報」といった「作成上の留意事項」で要求されている内容が盛り込まれていることが分かります。
この開示資料は、記載内容の検討や実際の作成に時間がかかることに加え、タイミングとしては東証への上場申請時に必要となることから、早い段階からの作成準備が必要になると思います。そのため、マザーズ上場を目指している会社さんには早めの準備をおすすめしたいと思います。
(関口)