上場準備の作業にかかわっていると「上場準備作業のチェックリスト」、「決算作業に係るチェックリスト」、「労務管理のチェックリスト」など、多くのリストを見る機会があります。(東京証券取引所の新規上場ガイドブックにも、マザーズ事前チェックリストが掲載されています。)
チェックリストには、「必要な作業等の漏れを防ぐ」「一定レベルのノウハウを多数で共有する」という役割がありますので、限られた時間の中で多くの課題を効率良く処理しなければならない上場準備にとって、チェックリストは非常に有効です。
そして上場準備会社の裾野の広がりやコンプライアンス意識の高まりを背景に、上場準備におけるチェック項目は、質・量ともに増大しています。
一方、チェックリストにも限界はあります。
たとえば「与信管理制度が適切に整備、運用されているか」というチェック項目は、与信管理の運用状況の確認漏れを防ぐことはできますが、制度の有効性を評価することまではできません。
与信管理制度評価のためには、「経営者は与信管理の重要性を理解しているか」「与信限度は合理的な方法で設定されているか」・・・のように、チェック項目を細分化していく必要がありますが、チェック項目を細かくすればするほど評価対象の個別事情を反映することが難しくなります。
そのため実際のチェック項目は、多くの場合、ある程度の柔軟性をもって設定されており、
その結果、合格ギリギリのレベルになると、チェック者により「チェックを入れる(合格)」、「入れない(要改善)」といった判断の差が生じることになります。
1つの項目に限れば、この差の影響は小さいかも知れません。しかし、チェック項目が多くなると、影響は無視できない場合があります。仮にすべてのチェック項目をギリギリのレベルで合格となった会社があるとして、その会社が全体として合格レベルなのかというと、そうとは限らないと思います。
当然のことですが、上場準備チェックリストの最後の項目は「上場会社としてふさわしい会社か」です。
個別のチェック項目の消し込みに汲々として、最後のチェック項目を忘れることがないよう気をつけたいと考えています。
(原田)