株式会社ラルク
徐々に３月決算の時期が近づいてきました。３月決算の会社さんは準備の状況はいかがでしょうか。第３四半期が終わったばかりかと思いますが、今年は収益認識会計基準の原則適用初年度となります。また、KAMの原則適用の２年目となります。監査法人とのコミュニケーションをしっかりととって、両者の理解に齟齬がないようにしたいですね。
最近では、証券アナリスト協会にて昨年の3月決算会社（2,342社）のKAMを対象に選定した「監査上の主要な検討事項（KAM）の好事例集」（23社+特別枠３社）が公表されています。約80ページある長編ですが、採択された26社それぞれに証券アナリストによるコメントや要望が掲載されており、投資家サイドのKAMの見方が伺えて非常に良い内容だと思います。
上場承認時の有価証券届出書の監査報告書は、直前期末において資本金５億円未満かつ負債200億円未満の会社、もしくは、資本金５億円以上であっても売上高10億円未満かつ負債200億円未満である会社については、KAMの対象外となりますが、上場後は資本金が５億円を超える会社がほとんどだと思いますので、早くから自社のKAMについて監査人と議論しておかれた方が良いと思います。下記が好事例集で採択された26社のリストと最近のIPOでのKAMの事例となりますが、類似業種や興味のある会社があれば当該好事例集のアナリストコメントの確認や上場企業のKAMとIPO承認時の有価証券届出書でのKAMとの比較をされてみることをお勧めします。
|
会社名 |
証券コード 業種 |
市場 決算期 |
監査法人 事務所 |
EDINET監査報告書リンク |
|
㈱スペースバリューホールディングス |
1448 建設業 |
東証1部 2021年３月 |
PwC京都 東京 |
|
|
（KAMのテーマ） ・ 立体駐車場事業に属する子会社の取得により認識されたのれんの減損損失の認識の判定 ・ 工事契約に係る工事原価総額の見積り及び発生工事原価の集計について |
||||
|
ＲＩＺＡＰグループ㈱ |
2928 小売業 |
札幌ア 2021年３月 |
太陽 東京 |
|
|
（KAMのテーマ） ・ RIZAP株式会社における繰越欠損金に係る繰延税金資産の回収可能性 ・ 有形固定資産及び使用権資産の減損 ・ 継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況の評価 ・ 契約管理システムに係る売掛金及び前受金残高の正確性 |
||||
|
山喜㈱ |
3598 繊維製品 |
東証2部 2021年３月 |
あずさ 大阪 |
|
|
（KAMのテーマ） ・ 継続企業の前提に関する重要な不確実性の有無についての経営者による判断の妥当性の評価 ・ 国内販売セグメントに属する山喜株式会社の製品に含まれる滞留在庫の評価の合理性 |
||||
|
大和工業㈱ |
5444 鉄鋼 |
東証1部 2021年３月 |
PwCあらた 大阪 |
|
|
（KAMのテーマ） ・ スルブカンパニーBSC(c)が保有する有形固定資産の評価 ・ 韓国鉄鋼事業に関する事業分離及び関係会社株式の一部売却に係る会計処理 |
||||
|
ＣＫＤ㈱ |
6407 機械 |
東証1部 2021年３月 |
トーマツ 名古屋 |
|
|
（KAMのテーマ） ・ 機器部門のたな卸資産の評価 ・ 自動機械部門における大型包装機械の売上計上時点 |
||||
|
小倉クラッチ㈱ |
6408 機械 |
東証JQS 2021年３月 |
あずさ 北関東 |
|
|
（KAMのテーマ） ・ 小倉離合機（東莞）有限公司の棚卸資産の実在性及び評価単価の正確性の検討 ・ 小倉離合機（長興）有限公司の棚卸資産の実在性及び評価単価の正確性の検証 ・ 小倉クラッチ株式会社の第一工場及び赤堀工場（その他の部門）に係る固定資産の減損損失の認識の妥当性 |
||||
|
㈱東芝 |
6502 電気機器 |
東証1部 2021年３月 |
PwCあらた 東京 |
|
|
（KAMのテーマ） ・ 見積総工事原価の妥当性（連結財務諸表に対する注記２.主要な会計方針の要約及び注記12.収益を参照。） ・ キオクシアホールディングス株式の評価（連結財務諸表に対する注記８.関連会社に対する投資を参照。） |
||||
|
㈱明電舎 |
6508 電気機器 |
東証1部 2021年３月 |
あずさ 東京 |
|
|
（KAMのテーマ） ・ PRIME MEIDEN LIMITEDにおけるのれんを含む資産グループの減損損失の認識の要否に関する判断の妥当性 ・ 工事進行基準の適用に関する工事原価総額の見積りの合理性 |
||||
|
シャープ㈱ |
6753 電気機器 |
東証1部 2021年３月 |
PwCあらた 大阪 |
|
|
（KAMのテーマ） ・ 連結子会社における不適切な会計処理 ・ 持分法適用関連会社堺ディスプレイプロダクト㈱における固定資産の減損 |
||||
|
㈱名村造船所 |
7014 輸送用機器 |
東証1部 2021年３月 |
トーマツ 大阪 |
|
|
（KAMのテーマ） ・ 工事進行基準を適用した売上高の工事の進捗度の見積り、工事損失引当金の見積り ・ 固定資産の減損の検討における将来キャッシュ・フローの見積り ・ 継続企業の前提に関する経営者による対応策の評価 |
||||
|
㈱バンダイナムコホールディングス |
7832 その他製品 |
東証1部 2021年３月 |
あずさ 東京 |
|
|
（KAMのテーマ） ・ 国内主要開発拠点の家庭用ゲームに係る仕掛品の評価 ・ 株式会社バンダイナムコアミューズメントに関する有形及び無形固定資産の減損損失の認識の要否、及び測定に関する判断 |
||||
|
㈱ニフコ |
7988 化学 |
東証1部 2021年３月 |
あずさ 東京 |
|
|
（KAMのテーマ） ・ 中国における韓国系ビジネス拠点の固定資産に係る回収可能価額の見積りの合理性 ・ 有形固定資産の減価償却方法の変更理由の正当性及び注記の適切性 |
||||
|
丸紅㈱ |
8002 卸売業 |
東証1部 2021年３月 |
EY新日本 東京 |
|
|
（KAMのテーマ） ・ 米国航空機リース事業において保有する航空機資産の減損、及び同事業への投資に関する減損の兆候の有無 ・ Sugar Groupとの訴訟に関する訴訟損失引当金の認識要否 |
||||
|
㈱ＡＯＫＩホールディングス |
8214 小売業 |
東証1部 2021年３月 |
PwCあらた 東京 |
|
|
（KAMのテーマ） ・ エンターテイメント事業における複合カフェ店舗固定資産の減損の兆候の把握及び減損損失の認識と測定 ・ ファッション事業における店舗固定資産の減損損失の認識と測定 ・ 繰延税金資産の回収可能性 |
||||
|
三井住友トラスト・ホールディングス㈱ |
8309 銀行業 |
東証1部 2021年３月 |
あずさ 東京 |
|
|
（KAMのテーマ） ・ 法人向け与信に対する貸倒引当金の見積り ・ 退職給付制度の一部改訂を踏まえた退職給付債務の見積り及び過去勤務費用の損益処理方法の変更 ・ 固定資産の減損会計の適用方法の変更及び減損損失の計上 |
||||
|
日本証券金融㈱ |
8511 その他 金融業 |
東証1部 2021年３月 |
東陽 東京 |
|
|
（KAMのテーマ） ・ ヘッジ会計の有効性に関する評価 ・ 繰延税金資産の評価 |
||||
|
第一生命ホールディングス㈱ |
8750 保険業 |
東証1部 2021年３月 |
あずさ 東京 |
|
|
（KAMのテーマ） ・ 海外子会社で計上されているのれんの減損損失の認識の要否に関する判断の妥当性 ・ 海外子会社で計上されている保有契約価値の償却又は損失の計上に関する判断の妥当性 ・ 責任準備金の積立ての十分性に関する判断の妥当性 ・ 繰延税金資産の回収可能性に関する判断の妥当性 |
||||
|
東京海上ホールディングス㈱ |
8766 保険業 |
東証1部 2021年３月 |
PwCあらた 東京 |
|
|
（KAMのテーマ） ・ 主要子会社の支払備金の見積り ・ Pure社ののれん及びその他の無形固定資産の評価 ・ 流動性の低い証券化商品及び商業用不動産担保付貸付金等の評価 |
||||
|
㈱商船三井 |
9104 海運業 |
東証1部 2021年３月 |
あずさ 東京 |
|
|
（KAMのテーマ） ・ 長期傭船契約に係る契約損失引当金の見積りの合理性 ・ 海洋事業部門に属するFSRUの減損損失の測定に用いられた正味売却価額の見積りの合理性 ・ 事業再編関連損失に係る船舶売却価額及び傭船契約譲渡価額の見積りの合理性 |
||||
|
日本航空㈱ |
9201 空運業 |
東証1部 2021年３月 |
あずさ 東京 |
|
|
（KAMのテーマ） ・ 収益認識の前提となるITシステムの信頼性及びマイレージに関する重要な見積りの合理性 ・ 日本航空株式会社の繰延税金資産の回収可能性に関する判断の妥当性 ・ 航空運送事業の固定資産の減損損失の認識の要否に関する判断の妥当性 |
||||
|
四国電力㈱ |
9507 電気・ガス業 |
東証1部 2021年３月 |
トーマツ 高松 |
|
|
（KAMのテーマ） ・ 【発電・販売事業セグメントの電灯料及び電力料】 ・ 【情報通信事業セグメントのデータセンター事業の評価】 |
||||
|
㈱カプコン |
9697 情報・通信 |
東証1部 2021年３月 |
あずさ 大阪 |
|
|
（KAMのテーマ） ・ デジタルコンテンツ事業におけるゲームソフト仕掛品の評価の合理性 ・ 無償ダウンロードコンテンツに係る繰延収益の妥当性 |
||||
|
ソフトバンクグループ㈱ |
9984 情報・通信 |
東証1部 2021年３月 |
トーマツ 東京 |
|
|
（KAMのテーマ） ・ アームのれんの評価 ・ レベル３に分類された投資の評価 |
||||
（特別枠３社）
|
会社名 |
証券コード 業種 |
市場 決算期 |
監査法人 事務所 |
EDINET監査報告書リンク |
|
㈱フェローテックホールディングス |
6890 電気機器 |
東証JQS 2021年３月 |
EY新日本 東京 |
|
|
（KAMのテーマ） ・ 有形固定資産の減損（太陽電池用シリコン製品事業） ・ 有形固定資産の減損（持分法適用会社の半導体ウエーハ事業） ・ 関連当事者取引(連結子会社が行った第三者割当増資の関連当事者による引き受け) ・ 開示すべき重要な不備(米国子会社及び会社の全社的な内部統制の不備) |
||||
|
京セラ㈱ |
6971 電気機器 |
東証1部 2021年３月 |
PwC京都 京都 |
|
|
（KAMのテーマ） ・ Soraa Laser Diode, Inc.の買収に伴うのれん及び無形資産の測定（連結財務諸表注記 7．企業結合） ・ 有形固定資産、のれん及び無形資産の減損判定（連結財務諸表注記 3．重要な会計方針 (9）非金融資産の減損、16．非金融資産の減損） |
||||
|
セイコーホールディングス㈱ |
8050 精密機器 |
東証1部 2021年３月 |
あずさ 東京 |
|
|
（KAMのテーマ） ・ ウオッチ事業におけるたな卸資産の評価の妥当性 ・ 関連当事者からの不動産取得取引の妥当性 |
||||
また、昨年11月以降に承認されたIPO銘柄のうちKAMを監査報告書に記載している会社は以下のとおりとなります（2022年２月15日現在）。
|
会社名 |
証券コード 業種 |
市場 決算期 |
監査法人 事務所 |
EDINET監査報告書リンク |
|
㈱True Data
2021年11月承認 直前期資本金５億円以上 |
4416 情報・通信 |
マザーズ 2021年３月 （直前期のみ） |
EY新日本 東京 |
|
|
（KAMのテーマ） ・ 外部へのサービス提供に用いるソフトウエアの評価 |
||||
|
㈱長栄
2021年11月承認 直前期負債200億円以上 |
2993 不動産業 |
東証2部 2021年３月（直前期のみ） |
あずさ 京都 |
|
|
（KAMのテーマ） ・ ホテルの減損損失の認識の要否に関する判断の妥当性 |
||||
|
住信ＳＢＩネット銀行㈱
2022年２月承認 直前期資本金５億円以上 |
7163 銀行業 |
東証1部 （直前期のみ） |
あずさ 東京 |
承認後中止 |
|
（KAMのテーマ） ・ 住宅ローン債権に係る一般貸倒引当金の見積り |
||||
（加藤）
2024年IPO社数(予定を含む)=26社*
2023年IPO社数(通期)＝96社*
4月12日現在
|
市場別 |
2024年 （含予定） |
2023年 (参考) |
|
プライム スタンダード グロース メイン-名 札幌（本則） ネクスト-名 アンビシャス |
0 3 23 0 0 1 0 |
2 23 66 5 1 1 0 |
| Ｑボード | 0 | 1 |
|
合計 |
27＊ |
99＊ |
＊複数市場へ同時に上場する会社があるため、IPO社数と市場別内訳の合計は一致しない点にご注意ください。
メンバーブログ
過去分はメンバー紹介ページの各メンバーのブログ欄をご参照ください。
サイト内検索
株式会社ラルク
【ご注意ください】
当社の社名を名乗った振込詐欺行為が確認されております。当社が個人に対して振込請求を行うことは、有料サービスの提供等、お客様からのお申込みやご依頼に基づくものを除きございませんので、ご注意願います。
（ご参考窓口）
また、現在、世界中で「コールド・コーリング（Cold Calling）」と呼ばれる詐欺的な証券投資勧誘行為も行われております のでご注意願います。
2023年IPO社数（通期）=96社*
2022年IPO社数（通期）＝91社*
|
市場別 |
2023年 |
2022年 (参考) |
|
プライム スタンダード グロース メイン-名 札幌（本則） ネクスト-名 アンビシャス |
2 23 66 5 1 1 0 |
3※1 14※2 70※3 2 0 2 1 |
| Ｑボード | 1 | 0 |
|
合計 |
99＊ |
92＊ |
＊複数市場へ同時に上場する会社があるため、IPO社数と市場別内訳の合計は一致しない点にご注意ください。
※1：東証1部1社を含みます。
※2：東証2部＋JQ4社を含みます。
※3：マザーズ10社を含みます。
2022年IPO社数＝91社＊
2021年IPO社数＝125社＊
|
市場別 |
2022年
|
2021年 (参考) |
|
プライム スタンダード グロース 東証1 |
2 10 60 1 |
－ － － 6 |
|
東証2 |
3 |
8 |
|
マザーズ |
10 |
93 |
|
JASDAQ メイン-名 |
1 2 |
16 － |
|
名証2 |
0 |
3 |
|
ネクスト-名 ｾﾝﾄﾚｯｸｽ |
2 0 |
－ 1 |
|
Qボード ｱﾝﾋﾞｼｬｽ |
0 １ |
3 － |
|
合計 |
92＊ |
130＊ |
＊複数市場へ同時に上場する会社があるため、IPO社数と市場別内訳の合計は一致しない点にご注意ください。