「一部指定」とは、取引所の市場第二部銘柄である上場株式が、市場第一部銘柄となることをいいます。(逆に市場第一部銘柄が、市場第二部銘柄に指定されることを「指定替え」といいます。)
東京証券取引所、名古屋証券取引所には、それぞれ「市場第一部」と「市場第二部」があり、未上場会社が上記2取引所の新興市場以外の市場に上場する場合には、原則として市場第二部銘柄に指定されます。
市場第二部銘柄となった上場会社は、市場第一部指定申請を行い、取引所の審査に合格すると市場第一部銘柄に指定されます。
(一部指定基準(形式基準))
各取引所は、市場第一部銘柄に指定されるための形式基準を定めています。
東京証券取引所の場合、今後予定されている市場再編での各市場の性格付けを反映し、一部市場の形式基準は、株式の流動性、収益力等の点で、二部市場よりも高い基準となっています。(注)
(注)東京証券取引所の一部指定基準(形式要件)については、本項目の末尾をご参照ください。
(一部指定審査)
一部指定のための形式基準を充足した会社は、基準となる決算期の決算数値確定後に、申請書類を整え、取引所の審査を受けるために一部指定の申請を行います。
審査の実施方法や審査項目は概ね新規上場 (二部上場)の場合と同じです。
(注1)東京証券取引所の一部指定基準(実質基準)については、本項目の末尾をご参照ください。
(注2)東京証券取引所の場合、標準審査期間は以下のように定められています。
分類 |
標準審査期間 |
規則 |
新規上場 (本則市場) |
新規上場申請を受理してから3か月 |
有価証券上場規程 第207条 第3項 有価証券上場規程施行規則 第215条の2 |
一部指定 |
一部銘柄への指定の申請を受理してから3か月 新規上場時から会社の事業内容、コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制等に著しい変更のないときは、その状況を勘案して、上場後の企業内容等の開示実績等を中心に審査を行う(注) |
有価証券上場規程 第309条 第3項 有価証券上場規程施行規則 第310条の2 上場審査等に関するガイドライン Ⅳ 1 |
(注)市場第二部への上場後、会社の事業内容、内部管理体制等に大きな変更がない場合の一部指定審査では、審査期間が2ヶ月程度に短縮される場合があります。
(参考1)東京証券取引所の一部指定審査の審査形式要件等
項目 |
一部指定 |
新規上場(市場第二部)(注) |
審査対象 |
一部指定日において、上場後1年以上を経過している銘柄を対象 (有価証券上場規程 第307条 6項) |
- |
株主数 |
一部指定の時までに800人以上 |
上場の時までに400人以上 |
流通株式等 |
a 流通株式数 2万単位以上 b 流通株式の時価総額 100億円以上 c 流通株式数(比率) 上場株券等の数の35%以上 |
a 流通株式数 2,000単位以上 b 流通株式の時価総額 10億円以上 c 流通株式数(比率) 上場株券等の数の25%以上 |
時価総額 |
250億円以上(一部指定日) |
- |
事業継続年数 |
- |
3年以上 |
純資産の額 |
連結純資産50億円以上(一部指定日) (かつ単体純資産が負でないこと) |
連結純資産の額が正 |
利益の額又は売上高 (利益の額は、連結経常損益に、非支配株主に帰属する損益を加減) |
次のaまたはbに適合 a 最近2年間における利益の額の総額が25億円以上 b 最近1年間の売上高が100億円以上かつ時価総額が1000億円以上 |
最近1年間の利益の額が1億円以上 |
虚偽記載又は不適正意見等 |
a 最近2年間 虚偽記載なし b 最近2年間(最近1年間を除く)「無限定」もしくは「除外事項を付した限定付」 c 最近1年間の財務諸表等の監査意見が原則として「無限定適正」 d 内部統制報告書が、次のいずれにも該当しない ・ 最近1年間の内部統制報告書に「評価結果を表明できない」旨記載 ・ 最近1年間の内部統制監査報告書に「意見の表明をしない」旨記載 |
同左 ただしdは、申請会社の株券等が国内の他の金融商品取引所に上場している場合に適用 |
(注)新規上場の場合、他に上場会社監査事務所による監査、株式事務代行機関の設置、単元株式数、株券の種類、株式の譲渡制限の撤廃、指定振替機関における取扱い、合併等の実施の見込みについての基準があります。
(参考2)東京証券取引所の実質審査基準
一部指定:有価証券上場規程 第309条
新規上場(市場第二部):有価証券上場規程 第207条
項目 |
一部指定及び新規上場(市場第二部) |
企業の継続性及び収益性 |
(一部指定) 継続的に事業を営み、安定的かつ優れた収益基盤を有していること (市場第二部) 継続的に事業を営み、かつ、安定的な収益基盤を有していること |
企業経営の健全性 |
事業を公正かつ忠実に遂行していること |
企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性 |
コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制が適切に整備され、機能していること |
企業内容等の開示の適正性 |
企業内容等の開示を適正に行うことができる状況にあること |
その他公益又は投資者保護の観点から当取引所が必要と認める事項 |
|
(注)上記の審査は「上場審査等に関するガイドライン」にそって行われます。
関連項目:証券会社審査と取引所審査、形式基準と実質基準