【加藤】S-1方式第1号

ようやく富士山の山頂が白くなりました。今年の初冠雪は11月7日で、統計開始以降の130年間で最も遅い記録だそうです。今年も本当に暑い年でしたね。

世間では石破内閣による衆議院解散総選挙が行われ、自民党は大きく議席を減らしました。一方、米国ではトランプ大統領が返り咲きました。来月はIPOラッシュの時期ですが株価にはどのような影響があるのか気になるところです。

さて、これまで弊社用語集や拙作ブログにて取り上げてきましたS-1方式(承認前届出書提出方式)ですが、この方式を適用した第1号案件が登場しました。その発行体は「キオクシア」です。

EDINETで同社の有価証券届出書を検索する際は注意が必要です。検索欄に社名を入力して検索ボタンを押すだけでは表示されません。これは、デフォルトで「有価証券報告書」のみが選択されているためです。「有価証券報告書」のチェックを外し、「その他の書類種別」にチェックを入れて検索を行うと、同社の有価証券届出書や訂正届出書が見つかります。

キオクシアの有価証券届出書を見てみると今年の12月から来年6月までの間に上場する予定のようです。これを機に、2022年にS-1方式ではない通常の方式でプライム市場に上場した大栄環境の有価証券届出書と比較し、両方式の主な違いを書き出してみました。なお、本ブログは投資を勧誘するものではありません。

 

キオクシア

大栄環境

有価証券届出書

 

 

【表紙】

注書きで申請済承認前である旨の記載

該当の注記はなし

第一部【証券情報】

 

 

第1【募集要項】

 

 

1【新規発行株式】

発行数は未定と記載

注記として、届出書提出後に機関投資家を対象に募集・売出しの勧誘を行う旨や、一般投資家への勧誘を行わない旨が記載

発行数は承認予定の202411月から2025年5月までに、ロックアップ合意は202412月から2025年6月までに決定と記載

発行数の記載あり

2【募集の方法】

ブックビルディング方式での発行価額、資本組入額の総額をレンジ表記(「見込額」との表現のみで想定発行価格の注記なし)

想定発行価格に基づく特定額を記載

4【株式の引受け】

引受株式数は未定と記載

引受株式数を記載(変更可能性の注記あり)

5【新規発行による手取金の使途】

払込金額の総額と差引手取概算額はレンジ表記(想定発行価格の注記なし)

発行諸費用の概算額は特定額

想定発行価格に基づく特定額を記載

第2【売出要項】

 

 

1【売出株式(引受人の買取引受けによる国内売出し)】

売出数、売出価額総額、売出人は未定と記載、勧誘に関する注記あり

売出数、売出価額総額、売出人の具体的な記載あり

3【売出株式(オーバーアロットメントによる売出し)】

同上

同上

【募集又は売出しに関する特別記載事項】

申請済承認前である旨の記載

該当の記載はなし

第3【その他の記載事項】

目論見書の交付がまだ行えないため該当事項なしとの記載

目論見書にロゴとカラー印刷を記載する旨を記載

訂正届出書

現時点では1回のみ

2回提出

【表紙】

注書きで申請済承認前である旨を記載

該当の注記はなし

1【有価証券届出書の訂正届出書の提出理由】

要約中間連結財務諸表を記載するため提出する旨を記載(中間連結財務諸表に対する期中レビュー報告書も添付)

1回目はロードショーにより仮条件が決まったため、2回目はブックビルディングにより発行価格、引受価額等がきまったため、提出する旨を記載

いかがでしょうか。このように比較するとS-1方式の特徴が浮かび上がります。ただ、思ったほど差異は少ない印象です。

その他、S-1方式に関係はないですが、キオクシアには種類株式、大栄環境には親引けの記載がありました。なお、監査報告書については有意な差異は見つけられませんでした(どちらもKAMの記載あり)。

また、両社ともにグローバルオファリングを計画又は実施しており、有価証券届出書の提出と同日に臨時報告書を提出し、その添付文書として英文仮目論見書とその抄訳が提出されています。なお、大栄環境の臨時報告書については当時の金商法では公衆縦覧期間が1年であったため現在はEDINETからは消えています(金商法改正により今年の4月以降の臨時報告書は、有価証券届出書と同様に公衆縦覧期間が5年に延長されました)。

今後もS-1方式銘柄の動向に注目していきたいと思います。

 

 

加藤

IPO状況12月6日現在

2024IPO数(予定含む)=86【-】*

2023IPO数(通期)=96*

 

市場別

2024

(含予定)

2023

(参考)

プライム

スタンダード

グロース

メイン-名

札幌(本則)

ネクスト-名

アンビシャス

4【-】*

13

64

1

0

4

1

2

23

66

5

1

1

0

 Qボード 3 1

合計

  90【-】

99

 複数市場へ同時に上場する会社があるため、IPO社数と市場別内訳の合計は一致しない点にご注意ください。また、【 】は、S-1方式による上場承認前の社数であり外数で記載しています。 

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過年度のIPO状況

2023IPO(通期)=96*

 

市場別

2023

2022

(参考)

プライム

スタンダード

グロース

メイン-名

札幌(本則)

ネクスト-名

アンビシャス

2

23

66

5

1

1

0

3※1

142

70※3

2

0

2

1

 Qボード 1 0

合計

   99

92

 複数市場へ同時に上場する会社があるため、IPO社数と市場別内訳の合計は一致しない点にご注意ください。

1:東証11社を含みます。

2:東証2部+JQ4社を含みます。

3:マザーズ10社を含みます。

 

2022IPO数=91

 

市場別

2022

 

2021

(参考)

プライム

スタンダード

グロース

東証1

2

10

60

1

6

東証2

3

8

マザーズ

10

93

JASDAQ

メイン-名

1

2

16

名証2

0

3

ネクスト-名

セントレックス

2

0

1

Qボード

アンビシャス

0

1

3

合計

92

130

 複数市場へ同時に上場する会社があるため、IPO社数と市場別内訳の合計は一致しない点にご注意ください。