投資に対する高い知見を有する特定投資家のみを相手方として、一定の要件(注)の下で行う投資勧誘を、特定投資家私募といいます。
(注)一定の要件の下で行う投資勧誘
(金融商品取引法 第2条 第3項 第2号 ロ、金融商品取引法施行令 第1条の5の2)
①原則として、証券会社等が、顧客からの委託により又は自己のために勧誘を行うこと
②投資勧誘の対象の有価証券が、特定投資家等以外の者に譲渡されるおそれが少ないこと
特定投資家私募は、「投資者保護」と「スタートアップ企業の資金調達の円滑化・大規模化」を両立するための施策として導入された制度です。
特定投資家私募は、プロ向け市場(PRO Market)の上場会社の資金調達や、一定の要件を満たす非上場会社の資金調達(私募)で利用される制度です。
(注)J-ships(特定投資家向け銘柄制度)は、特定投資家私募の枠組みを活用して行う、非上場会社による資金調達の制度です。
(非上場会社向けの私募)
投資者保護の観点から、証券会社による非上場株式(店頭有価証券)の投資勧誘は、以下の3つの場合について、一定の条件の下で認められています。(以下の3つ以外の投資勧誘は禁止)
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制度 |
協会規則 |
適用対象 |
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①適格機関投資家私募 |
店頭有価証券に関する規則 第4条 |
金融商品取引法 第2条3項2号 イ 適格機関投資家のみを相手に勧誘する場合で、当該有価証券が適格機関投資家以外の者に譲渡されるおそれが少ないもの |
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②自ら企業価値評価等(DD)が可能な特定投資家への勧誘 |
店頭有価証券に関する規則 第4条の2 |
金融商品取引法 第2条3項2号 ハ 特定投資家のみ(49名以下)を相手方する場合で、多数の者に所有される可能性が少ないもの |
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③特定投資家私募 |
店頭有価証券等の特定投資家に対する投資勧誘等に関する規則 |
金融商品取引法 第2条 3項2号 ロ ・特定投資家のみを相手方とする ・原則として証券会社等が勧誘を行う ・当該有価証券が特定投資家等以外の者に譲渡されるおそれが少ないこと |
上記のうち特定投資家私募は、たとえば以下の点で、他の2つの制度と異なります。
①「適格機関投資家私募」よりも勧誘先(特定投資家)の範囲が広い
②「自らDDが可能な特定投資家への勧誘」とちがい、勧誘先が50名以上でも、私募扱いで有価証券届出書の作成が不要。
(特定投資家の範囲)
特定投資家の範囲は、以下のように定められています。
(金融商品取引法 第2条31項、第34条の3、第34条の4
金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令 第23条)
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特定投資家 一般投資家へ移行不可 |
適格機関投資家※ 国、日本銀行 |
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特定投資家 一般投資家へ移行可能 |
その他内閣府令で定める法人 独立行政法人、特定目的会社、 上場会社、 取引の状況その他の事情から合理的に判断して資本金の額が五億円以上であると見込まれる株式会社 外国法人 等 |
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一般投資家 ただし、証券会社に申し出ることで、特定投資家へ移行可能 |
・上記以外の法人 ・金融商品取引業等に関する内閣府令第62条に掲げる要件を満たす個人等 |
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一般投資家 特定投資家へ移行不可 |
上記以外の個人 |
※ 適格機関投資家
金融商品取引法第2条 3項1号
金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令 第10条1項
(個人の一般投資家が特定投資家へ移行するための要件)
個人の一般投資家が特定投資家へ移行するための要件は、以下の5類型が定められています。
(金融商品取引法第34条の4 1項、
金融商品取引業等に関する内閣府令第62条)
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類型 |
条件1 |
条件2 |
条件3 |
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1 |
純資産3億円以上 |
金融資産合計が3億円以上 |
申出対象の金融商品取引契約締結から1年以上経過 |
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2 |
純資産5億円以上 または 金融資産の合計5億円以上 または 前年の収入金額1億円以上 |
― |
同上 |
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3 |
純資産額3億円以上 または 金融資産合計が3億円以上 |
最近1年間の金融資産の1月当たりの平均的な契約件数が4件以上 |
同上 |
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4 |
純資産1億円以上 または 金融資産の合計1億円以上 または 前年の収入金額が1000万円以上 |
特定の知識を有する者であること (例) ・金融商品取引業等への従事期間が通算1年以上 ・アナリスト協会認定アナリストの資格を有する者 ・経営コンサルタント業に係る業務への従事期間が1年以上で、十分な知識、経験を有する者 他 |
同上 |
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5 |
匿名組合の営業者である個人その他これに類するもの |
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(審査等の実施)
証券会社は、特定投資家私募を行う場合、投資勧誘を行おうとする店頭有価証券等について、当該店頭有価証券等の特性やリスクの内容を把握し、投資勧誘を行うことがふさわしいか否か及び投資勧誘を行う
顧客の範囲について検証しなければなりません。
(店頭有価証券等の特定投資家に対する投資勧誘等に関する規則 第2章)
(特定投資家私募に関する発行開示及び継続開示)
特定投資家私募を実施する場合、特定証券情報を作成する必要があります。(発行開示)
また特定投資家私募を実施した会社は、事業年度ごとに発行者情報を作成する必要があります。(継続開示)
特定証券情報及び発行者情報の様式は、日本証券業協会により定められています。
特定証券情報の様式(店頭有価証券の場合):様式1による
発行者情報の様式(店頭有価証券の場合):様式4による
これらの様式は、有価証券届出書や有価証券報告書に類似しているものの、全体的に簡素な内容となっています。
(店頭有価証券等の特定投資家に対する投資勧誘等に関する規則 第3章)
関連項目:J-ships(特定投資家向け銘柄制度)