最近、「パワハラ」「セクハラ」などハラスメントに関する報道をよく目にするように感じます。直接の原因は、政・官界、スポーツの現場でのハラスメントや「#Me Too」に関する報道がきっかけで、マスコミが他にも同様のケースがないか調査をしているからかも知れません。
報道で話題になっているハラスメントは比較的閉鎖的な組織内で起こっているものが多く、全ての組織で、報道されているようなハラスメントが行われているわけではないと思います。
ただ、報道されている例からは、加害者となりうる者(立場が上の者)の側は「熱心な指導」「単なるユーモア」などと認識が甘いのに対し、被害者側の認識は、より鋭くなって来ているのが見て取れます。
両者の認識のギャップが完全に埋まることはないでしょうし、ハラスメント絡みでトラブルが発生すると、組織の社会的信用を著しく損なうこともありますので、リスク管理の観点からは注意が必要です。
上場審査でのハラスメントの問題は、「反社会的勢力排除」や「未払残業・長時間労働」のような独立のチェック項目にまではなっていませんが、「法令遵守への取り組み」や「労務管理」の一部として確認されています。
上場準備会社側も、体制構築については、就業規則や関連規程の整備、研修の実施などにより、対策を実施済みの場合が多く、上場審査で目にとまるケースのほとんどは、内部通報等により、実際にトラブルが発生した場合ではないかと思います。
トラブルが発生した場合の審査のポイントは、
①適切な事実関係調査が実施され、調査結果が取締役会等に報告されているか
②調査の結果をふまえ、適切なプロセスにより処分等が決定されているか
③有効な再発防止策が策定され、実行されているか
で、①~③については社外取締役や監査役にも、その評価の確認が行われます。
この3点はどれも重要ですが、特に③の「再発防止策の実行(定着)」には要注意です。
再発防止策の策定まではしたものの、決められたとおりに実行されていなかったり、審査の段階で一部未着手の項目がある場合には、審査スケジュールに影響が出る場合もありますので、主幹事証券と協議しながら対応を進めていくことが必要です。
(原田)