ここ数年で証券会社の主幹事選定に際して環境が大きく変化してきているようです。
まず、大手証券会社は主幹事を獲得すべき対象会社を絞り込んできました。過去は対象会社を広く捕らえていたと思います。しかし、IPOまでの作業のボリュームが増えて、時間と労力が必要になってきました。即ち、過去よりもコストがかかるようになって来ています。その為、規模の大きな会社を手掛けることでコストを吸収し効率を高める必要もあるのでしょう。また、過去のIPOを達成した会社のその後の成長性を分析すると、規模の小さい会社は成長性に乏しいとの判断があるようです。
絞り込みにより対象会社が少なくなってきていますので、主幹事獲得には取りこぼししないように注力するようになります。一つの側面としては、主幹事獲得のための提案書作成にも重視し、相当工夫するようになって来ました。
一つの例です。(証券会社や提案先の会社により違いがあるのと、説明実行も順番が違うこともあります。)
1. エクイティ・ストーリー 2. バリュエーション 3. 資本政策
4. 上場市場選択 5. オファリング・ストラクチャー 6. マーケティング(販売)戦略
7.上場スケジュール 8. IPOに向けた審査論点 8. シンジケートストラクチャー
9.その他サポート体制(証券会社内の組織の役割など) 10. 諸費用等フィー体系
提案にあたり各証券会社は数回のヒアリングを行い、社内の複数の部署と連携し、時に200ページ前後と大作になることもあります。
一方、選定するIPO希望会社の方も相当の時間と労力を必要としますが、エクイティー・ストーリーやマーケティング(販売)戦略は、会社にとっては新たな視点からの分析などがあり、今後の為に非常に役立つものでもあります。
さて、では提案書でIPO希望会社は主幹事証券会社を決定出来るのでしょうか?
もちろん、提案書による差もあると思いますが、それ以外の要素を総合的に評価することが多いようです。各証券会社の熱意、ビジネスの理解力の加え、各部署の担当者の相性です。この相性は、経営者である方と各証券会社の役員の方、準備会社の担当者の方と証券各部署の担当者の方など、複数の視点から評価することになることが多いでしょう。因みに、現在問題になっているような銀行による優越的地位の乱用で系列証券を選定しているケースは知る限り影響は少ないように思います。
一方、やっとお互いを認め合ってスタートした準備も、途中で主幹事証券会社の変更があったりしますので、最後まで気を引き締めて付き合わないといけません。IPOを実現するまでの道のりは長くいくつもの障害を乗り越えないといけないのです。
弊社(ラルク)の、メンバーは皆証券会社勤務経験の知見を有していますので、この両者の潤滑油にもなることで喜んで頂けるよう強みを発揮して参りたいと思います。
(鈴木)